これでやっと 『リリーナ』
町を囲んでいた『盗賊』をシーンの傭兵団が撃退した後、リリーナ一行は帰りのキャラバンの支度編成をしていた
「シーン団長…この度は本当にありがとう。私たちは帰国するけれど、あなた方はこれからどうするの?」
リリーナはシーンに礼を言いつつ今後の事について聞く、シーンたちは恐らく帝国の陰謀による今回の騒動に関わってしまった
聞いたリリーナ自身も、今回の事でシーン達は帝国に居場所が無くなった事を理解して申し訳なさそうにうつ向いた
「しばらくそっちの国で過ごすよ」
うつ向いたリリーナに微笑みながら言う、シーンはわかっていて協力したから気にするなと言って、団員達に支度をするように指示を出した
向き直ったあとシーンは思い立ったようにリリーナに話す
「その代わりしばらくは仕事を頼んでくれないかな?警備でも戦でもなんでもやるから。団員達を飢えさせたくないしね」
「もちろんです!命の恩人だもの、そのぐらいはさせてほしいわ!」
リリーナは食い気味にシーンの手を握りまっすぐな目でシーンに誓った、少しの罪悪感と大きな期待を抱いて
「会長!キャラバン準備が完了しました!馬車はいつでもだせますよ!」
少し離れた所から声をかけるムーロンが支度の完了を伝える。その返事を手で返して、リリーナはシーンに「これからよろしく」と伝えてキャラバンの馬車へと小走りで駆け寄って行った
「あれが元敵国お姫様ね…よくあんなので大商会をまとめられるわね」
小首をかしげながらリリーナの背中を眺めるクララがシーンの背後に立っていた。いきなり現れたクララに驚きもせずに答える。
「まあ人は見かけによらないからね。あのお姫様は帝国の端の町で商売をしに来たんじゃないと思うよ?」
「というと?」
「あのお姫様の部下の数が少し多い…僕たちが戦ってる最中に合流した別動隊だろうね。多分他の大きな取引をしていたんだろう」
「そんな大きな取引を一番えらいお姫様がなぜ…ああなるほど」
「そう、あのお姫様は自ら囮になってこの町で商売をしていた」
「帝国側の目を欺くためってことよね、本命の取引を悟らせない為に」
クララの顔にはいつもの微笑みが少し消え、シーンに再度質問した
「その取引ってなんだったのかしらね?」
「さあ?でも一つわかった事がある」
「あら、なんなの?」
「多分、帝国海軍絡みだと思うよ?」
「あー…あり得るわね。帝国海軍ってうたってるけど、帝国の事なんて何一つ考えない非常に利己的な方々ですもの」
「おおかた占領した島国の特産品を売買するルートを確保したい海軍と、それを仕入れて新たな品で商売する商会…互いに莫大な利益を得られる最高の取引と言えるね」
「それに帝国だけでは特産品を売り捌けない海軍にとってはかなりうまい話しだよね」
「そのうち帝国の力関係のバランスが崩れるわね」
「カウロスは…いやカウロスの雇い主はそれを危惧して襲ってきたんだろう、まさか返り討ちにあうとおもわなかったんだろうけどさ…」
少し寂しそうに微笑みながらクララは言った
「帝国…滅ぶわね…」
「多分ね…だけどすぐじゃないと思うよ?」
「なぜ?」
「カウロスを癒した異形石…あれはきっと大陸じゃ取れない。まだ何か…別の勢力がいる。はっきりはわかんないけどそんな気がするんだ」
シーンの曖昧な発言を最後に、二人は無言になり支度を始める
そして支度を終える頃になって、再びシーンが口を開いた
「まあ僕たちが今考えなきゃならないのはこれからの僕たちの事だよ、クララ」
「そうね団長、とりあえず向こうでの生活を楽しみましょう」
そう言った二人は
故郷の別れをそれぞれ心中でつぶやいた




