表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

10 溺愛 ※

R15的表現がございます。苦手な方はご注意くださいませ。

(え……?)


 ディアスがスカーフをはぎ取った。

 美貌が迫り――唇がふさがれる。


 突然の感触に、ルーナはびっくりして目をみはった。とっさに両手を突っ張ろうとするが、がっちりと抱き留められていて叶わない。


「――、……っ」


 喘ぐように息を吐いたところで、隙間から何かがぬるりと侵入してくる。


「っ!」


 その正体を確かめる間もなく、口中が甘く満たされ、支配された。


(な、に……これ……?)


 問いかけるまなざしは、濃厚な熱を孕んだ瞳に受け止められる。


「ルーナ、かわいい……、大好きだよ……」


 いったん解かれた口づけは、愛の言葉と共に再開する。

 唇の端をついばみ、口角が緩むとそこから、先ほどと同じものが中へ押し入ってきた。


「んぅ……、ディア、ス……」


 今度はそれがなんなのか、わかった。

 意識するととてつもなく恥ずかしいが、不思議と胸は歓喜にときめいている。


「ずっと……こうしたかった」

(そう……なの?)


 彼はずっと何かを堪えていた。したかったこととは、深いキスだったのか。

 ルーナが彼の額に口づけをしたとき、困ったような反応をされたのは、ほしい場所が違ったからだったのかもしれない。


 口づけしながら彼の手は、壊れ物にふれるようにルーナの銀の髪を梳いてくる。

 その優しい手つきと、反して、奪うような舌づかいに翻弄される。ルーナはすっかりぼうっとしてしまった。


「ルーナ、嫌じゃない……?」

(嫌なんて……そんなわけ、ない)


 言葉で応える代わり、口中で暴れる彼に自らの舌先を寄り添わせる。


「ああ、本当に……かわいい、たまらない……」


 励まされたのか、愛撫の勢いが増す。

 小さく未熟なルーナの唇は、いつの間にかぽってりと腫れていた。その痺れるような感覚まで甘く、身を焦がす。

 そのうち、髪にふれていたディアスの手は、背中を伝って腰のくびれを撫で始めた。


「ん……、あ、あ……」


 撫でられているのは腰なのに、悪寒めいた快感が背筋を駆け上る。おまけにあらぬところが甘く疼いた。


(なんだか……なんだか……)


 いたたまれないような。もどかしいような。

 だけれど、やめてほしくはないような。

 妙な心地に酔いしれて、ディアスの首にぎゅっとしがみついた。二人の距離がいっそう近づき、早鐘のように打ち付ける鼓動が二つ、合わさる。


「は……ルーナ」


 吐息混じりの彼のささやきがひどく低く、耳を犯す。

 口づけは、解けては角度を変えてまた合わさり、永遠とも知れず続く。

 いつしかルーナも甘い交歓に夢中になって応えていた。


「……、ふ……」


 舌先を吸われると、身体の芯が熱く熟れて、たまらなくなる。

 身も心もディアスでいっぱいで、苦しいほど彼が愛おしい。

 もっと彼にすがりつきたいのに、身体から力が抜けて……ふにゃふにゃになってしまう。瞳には生理的な涙が浮かび、潤んだ熱い瞳でディアスを見つめた。


「っ」


 ふれあう彼の心臓が、ひときわ大きく跳ねる。

 腰回りをもどかしく撫でていた手が、大胆に動いて――。


「ちょっとお前たち! 二人の世界に入りすぎよ!!」


 突然響いた怒号に、二人は我に返った。


「わたしをむらむらさせてくれるんじゃなかったの!?」


 同時に見上げたそこには、顔を真っ赤にしてわなわなと震える女神フレーズがいる。


「やだ……、見られていたの、忘れていたわ……」

「俺も。ルーナがかわいすぎて、夢中で」

「ディアスったら、嫌よ、そんなふうに言うの、恥ずかしい……」

「恥ずかしがっているルーナもかわいい。大好きだ」

「……わたくしも、好、き」

「ああ! かわいい! 好き! だから、もっとしてもいい?」

「あ……だめ……、んっ」

「だめじゃないよ……ルーナ、は……っ」


 恋人たちは再び女神の存在を忘れて愛の営みに没頭する。

 フレーズは頭から湯気を蒸かして怒りくるった。


「ぐ・や・じ・い! こんなにコケにされたのは初めてよ!!」


 そこへ、天からまた別の声が響く。


「フレーズよ、そなたは女神失格じゃ」

「大神さま!?」

「愛と性の守護神を名乗りながら、恋人たちに嫌がらせするとは何事だ。罰として、女神の地位をはく奪し、人間界での修行を申しつける」

「嫌あ~~~!!」


 空を飛ぶ力も一緒に失ったフレーズは、どしゃっと地面に落とされる。

 そのすぐ横では、たった今女神ではなくなったフレーズをあざ笑うかのように、恋人たちが戯れていた。


「ルーナ、愛しているよ」

「わたくしもよ、ディアス……」


 とうに呪いの効果は切れている。

 それでも、二人はいつまでもいつまでも互いの愛を確かめあっていた。


‐完‐


読んでくださってありがとうございました。

なんとか連休中に完成できました!

少しでも楽しんでいただけましたら幸いです。

もしよろしければ今後の励みとさせていただきますのでブックマークや★評価などお願いいたします。


下記、連載中の長編『見た目は聖女、中身が悪女のオルテンシア』も毎日更新頑張っております。また遊びに来てくださると嬉しいです。

https://ncode.syosetu.com/n5971id/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
------------------------------------------------------------------------------
↓こちらもどうぞ。連載小説です↓
『見た目は聖女、中身が悪女のオルテンシア』

↓完結小説はこちら↓
『後宮恋恋』

『愛され天女はもと社畜』

『聖女のわたくしと婚約破棄して妹と結婚する? かまいませんが、国の命運が尽きませんか?』

------------------------------------------------------------------------------
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ