視える呼気
____が死んだ。
病気だった。
医師から持って半年持つかどうかと言われ、効果の出ていた治療を続けても1年は・・・と、言葉を濁されていた。
覚悟は、出来ていた。
宣告より一ヵ月も長く、頑張って頑張って、生き抜いてくれた。
けれど徐々に冷たく、固くなる体に、この手の温もりがなぜ移らないのかと、理不尽さを感じずにはいられなかった。
軽かった体は更に軽く小さくなって、この手に戻ってきた。
まだ温かい、でもすぐに消えて無くなる偽りの温もりが、只々愛おしかった。
家に帰り、小さくなった君に、ただいまとおかえりを。
いつも出迎えてくれた姿は、もう無い。
それでもふと、君の気配を感じる時がある。
外から帰って来たら玄関から、脱衣所で身支度をしていれば後ろから、寝室に入ればかくれんぼをしていたTVボードの下から。
微かな、でも確かに感じる気配は染み付いてしまった習慣だと、簡単に理解して片付けてしまいたくない。
少しずつ、少しずつ。
いつか分からなくなるだろうこの気配を、今はただ愛させて。
堕ちずに前へ向くために、今はただ、ただ・・・。
後ろをついて来る微かな足音。
聴こえる筈のない、鈴の音の幻聴。
振り返り、そこに居ない違和感と真逆の気配。
部屋で揺れる線香の煙に、君の呼気が視えた気がした。
先日ペットの猫が亡くなったので自分の気持ち整理も込めて書きました。
春の大嵐の日に保護して、家族として迎えてから七ヵ月。
短い期間ではありますがたくさんたくさん思い出をくれました。
ありがとう、また会う日まで