表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

視える呼気

作者: 柳熾苑


 ____が死んだ。


 病気だった。


 医師から持って半年持つかどうかと言われ、効果の出ていた治療を続けても1年は・・・と、言葉を濁されていた。


 覚悟は、出来ていた。

 宣告より一ヵ月も長く、頑張って頑張って、生き抜いてくれた。


 けれど徐々に冷たく、固くなる体に、この手の温もりがなぜ移らないのかと、理不尽さを感じずにはいられなかった。



 軽かった体は更に軽く小さくなって、この手に戻ってきた。


 まだ温かい、でもすぐに消えて無くなる偽りの温もりが、只々愛おしかった。



 家に帰り、小さくなった君に、ただいまとおかえりを。


 いつも出迎えてくれた姿は、もう無い。


 それでもふと、君の気配を感じる時がある。


 外から帰って来たら玄関から、脱衣所で身支度をしていれば後ろから、寝室に入ればかくれんぼをしていたTVボードの下から。


 微かな、でも確かに感じる気配は染み付いてしまった習慣だと、簡単に理解して片付けてしまいたくない。


 少しずつ、少しずつ。

 いつか分からなくなるだろうこの気配を、今はただ愛させて。


 堕ちずに前へ向くために、今はただ、ただ・・・。



 後ろをついて来る微かな足音。

 聴こえる筈のない、鈴の音の幻聴。

 振り返り、そこに居ない違和感と真逆の気配。




 部屋で揺れる線香の煙に、君の呼気が視えた気がした。




先日ペットの猫が亡くなったので自分の気持ち整理も込めて書きました。

春の大嵐の日に保護して、家族として迎えてから七ヵ月。

短い期間ではありますがたくさんたくさん思い出をくれました。


ありがとう、また会う日まで

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ