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レヴィア・テンペスト!!  作者: ハートフル外道メーカーちりひと
第七章. 知られざる逆転国家の秘宝
14/22

149. イライラ

 兵士に追っかけられ、逃げ出した四人。

 

 逃げる間に日が沈む時間になってしまった。結局観光というほどの観光はできず、四人は帰路につく。


「ね、ねぇ皆。大丈夫?」


 というかそれどころではなかった。純花は困った顔で三人へと問いかける。


 三者三葉の様子の三人。一人は明らかにイライラしており、一人はとても嬉しそう。もう一人はものすごく思い悩み、時折ハラハラとした表情でこちらを伺っている。


 で、イライラしているレヴィア。彼女はきょろきょろと周囲を睨みつけていた。その彼女をふふーんといった目つきで見下しているネイ。

 

 ふと、道端で会話している男たちがいる。彼らに向け、レヴィアがふわりとした笑顔を向けた。少しだけぽっと頬を染める男だが、すぐに微妙そうな表情に変化。

 

「フッ」


 続いてネイも彼らに軽い笑みを向けた。すると男たちはキャーキャーと黄色い声を出す。レヴィアの顔が愕然とした表情に変わる。

 

「フッフッフ……ハッハッハッハ……! ハァーッハッハッハッハ!!」


 そんな彼女とは反対に、とても嬉しそうに笑うネイ。レヴィアよりモテるという事実がよほど嬉しいらしい。


「ハーッハッハッハッハ……! あだっ!?」

「馬鹿笑いしてんじゃねーよ。CO2が勿体ねーだろが」


 八つ当たり気味にネイを叩くレヴィア。が、ネイが怒る事はなかった。抑えきれない喜びが彼女を笑顔にしているようだ。

 

 自分がモテないのが信じられないレヴィア。先ほどから愛想を振りまいているが、全然上手くいっていない。しかしネイが笑いかけると一発である。ネイの完勝状態であった。

 

 ネイを先頭に歩き続ける四人。通ったことのない道だが、大丈夫なのだろうか? イマイチ今の彼女はアテならない。純花は不安に思う。

 

「あいたっ!?」


 ふと、レヴィアがいきなりネイの後頭部をはたいた。見れば、イライラしまくっているレヴィア。

 

「こらこら、痛いじゃないか」


 が、ネイは平気そうである。笑顔を維持したまま。まるで子供のイタズラを目にしたような雰囲気。


「ねえレヴィア。ダメだよ喧嘩しちゃ」

「うるせー。バカでかい体でのしのし歩きやがって。うっとおしいんだよ。隅の方でこそこそしてろ。死ね」


 流石に理不尽だと思った純花は注意した……が、止まる様子はない。いつものレヴィアなら大体言う事を聞いてくれるのだが。それどころかものすごーく自分勝手な理由でインネンを付けだした。

 

 一体どうしてこうなったのだろうかと純花は疑問に思う。レヴィアのお世話を優先していたため、純花は先ほどの「モテない」云々を聞いていないのだ。

 

 そうした一方、ネイはぷぷぷと笑いを抑えていた。何と滑稽な、と言う感じで。レヴィアのこめかみにビキッと青筋が走る。

 

 困った純花はリズへと目線を向ける。しっかり者の彼女なら上手くとりなしてくれるだろうと。しかし今のリズはそれどころではないようで、ハラハラとした表情でこちらを見ている。こっちも訳が分からない。

 

「あっ、お姉さん。格好いいねー。どう? ウチの店で遊んでいかない?」


 ふと、誰かが声をかけてきた。見れば、ノースリーブの上衣に膝上くらいまでの腰巻を巻いた男がいた。濃い化粧をした。娼夫……他国で言う娼婦の男バージョンであった。

 

 彼は蠱惑的な笑みを浮かべつつネイの腕を取り、どこかへ導こうとする。「いや、私は……」と断ろうとしたネイだが、何かを思いついたらしく、レヴィアの方を見る。娼夫に完全シカトされている彼女を。ネイはドヤァッとレヴィアを見下した。ビキビキビキッとレヴィアの怒りマークがさらに数を増す。

 

 これはいけない。レヴィアの次の行動を察した純花が彼女を後ろからホールド。物理的に止めなければ絶対にまた何かするだろうとの考えからだ。リズが「ひゃあああっ!?」と焦った声を出した。

 

 しかし純花の行動は無駄に終わる。動きを封じられたレヴィアは足をびゅんと振り上げて靴を放った。スコーンといい音を立ててネイの顔面に命中。隣にいる娼夫が「ひっ」とビビっている。


「あっはっは! 全く、やんちゃなヤツめ」

「ネ、ネイ、痛くないの?」

「ん? 何がだ?」


 ぎょっとしながら純花が問いかけると、ネイはへらへらと笑っていた。たらりと鼻血をたらしながら。嬉しさのあまりダメージがゼロになっているようだ。




 そんな小競り合いをしつつ、四人はネイの実家へと戻る。家の中から漂う香ばしいニオイ。どうやらネイの父が料理を作ってくれているようだ。


「ただいま」

「おや、お帰り。どうしたんだい? その鼻」

「フフフ、まあちょっと。いやあ、困った困った。全く、モテるというのもいい事ばかりではないな」


 家に入ると、ひょいと台所から顔を出すネイの父。彼に対し、ネイは鼻声で返事を返した。鼻声なのは両鼻に栓を詰めているからだ。

 

 さらに彼女の後ろにはイライラしまくっているレヴィアと、悩みまくっているリズ。ネロが不思議そうな顔になる。

 

「む? 母上は?」

「まだ帰ってないよ。久々の王宮だから、話し込んでるんじゃないかな」


 ふう、と安心のため息を吐くネイ。見合い云々の事があるので、先延ばしできたのを安心しているようだ。

 

 そのまま時間が経ち、夜は更けていく。四人はローテーブルを囲んで座り、ネロの料理に舌鼓を打つ。家庭料理ながらもなかなかの味。専業主夫をしているだけの事はあるようだ。

 

「うむ、相変わらず美味い。流石は父上」

「皆のお口に合えばいいんだけど。けど、リアってば遅いなぁ。何しているんだろう」


 ネロは困ったような顔をした。「もしかして飲みにいっちゃったのかな? 全く、お客さんが来てるのに」と言いながら。流石に遅すぎる気はするが……。女同士の付き合いとかに巻き込まれたのかもしれない。

 



 その翌日。


「うーん……?」


 何やらもめるような声に純花は叩き起こされる。きょろきょろと周囲を見ると、眠っている仲間の姿。悪夢を見ているのかレヴィアとリズはうなされており、反対にネイはすやすやと快眠している様子。

 

「……な……! リアが……!?」


 再び聞こえてきた声。どうやら玄関の方のようだ。何か起こったのかと、純花はまぶたをこすりながらも玄関へと向かう。すると……

 

「あれ、お客さん?」


 ネロの他に、一人の男がいた。褐色に赤い髪の男。ネイの兄弟だろうか? 二人ともものすごく焦燥しているようだった。


「ああ、スミカちゃん。起きたんだね。ネイは……」

「ネイはまだ寝てるよ。どうしたの?」

「リアが……リアが捕まってしまったんだ!」


レヴィア・クエストの元ネタ(歌チート)を別方向に発展させた短編を投下しました。

https://ncode.syosetu.com/n8150ic/

https://kakuyomu.jp/works/16817330654225256604

どっちかでどーぞ。

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