ダンス
これで、もろもろのイベントが終了した。
乙女ゲームのシナリオは全部終わったと言ってもいい。
あとは、ヒロインちゃんが誰を選ぶかが気になる所だけど。
森イベントのパートナーがいなかったからなぁ。
個別イベントじゃなくて、皆で迷子捜索してたし。
これは、乙女ゲームとしてはバッドエンドなのか?
現実としてはそこそこ悪くない感じだと思うけど。
皆仲いいし、病み度も落ち着いているし。
そこそこいい感じだと思うけど。
でもやっぱりちょっとひけめが。
俺が余計な事しちゃったせいで、ヒロインちゃんの恋が台無しになっちゃったとかしてないかな。
それだったら、罪悪感だ。
どっ、どうしよう。
でも、幸いな事にまだあと二年学生生活が残ってるから、サポートしていけば、何とかなるはず。
誰を選ぶか分からないけど、二年あれば誰かしら恋に落ちる、と思う。
だって、あいつらちょっと病んでたけどイケメンだしな。
と言う事で、気になる事が大きすぎるため、卒業生を見送るための卒業パーティーに参加した俺は、うだうだ考得事をしていた。
そしたら、ミカエラが話しかけてきた。
「暇なら、踊ってた方が楽しくない?」
「どういう理屈?」
「退屈そうに見えたから」
「そうか?」
ドレスを着た彼女は、アピールするようにその場で一回転。
「どう?」
と聞いてきた。
思わず「最近元気だよ」と天然っぽいふざけ方をしたくなったけど、それをやったら怒られそうな気がしたのでやめておいた。
「可愛いと思うよ」
「自信なさそ」
「可愛い! 可愛いです!」
「はい、よろしい」
その後は、ミカエラとダンスタイム。
実際ミカエラは可愛かった。
聞かざると本領発揮するタイプなのかな。
普段より、ミカエラの周りが結構輝いているように見える。
横目で辺りを見回していると、マリンちゃんはアウルと踊っているようだった。
ミュクゼは、他の生徒会のメンバーと打ち合わせっぽい事をしている。
フレオンは食事に夢中だ。
これはアウルルートかな。
運命の修正力が発動した時は、どうなるかと思ったけど案外なんとかなるもんだな。
良かった。
少しでも皆の力になれたようで。
なんて考えていると、「ダンスの最中によそ見とは良い度胸だねー。んー?」と怒られてしまった。
ちゃうんです。
浮気と違くて。
その後は、ミカエラのご機嫌取りに必死になった。
終わりがけには、ヒソヒソ話をするフリからの、チュウだ。
あのチュー。
ほっぺにあたたかいものが。くっついちゃったりする大事件だ。
「ぬなっ」
「あはは、変な顔!」
罠じゃない、だと!
ぼけっとしている俺を置いて、ミカエラはクラスの女の子たちが固まっている区画へと走り去ってしまう。
うーん。
時差かな。
何となくミカエラの後ろ姿まで、可愛く見えてきた。
頭のてっぺんとか足元とかまで、キラキラエフェクトがかかっているような気がする。
でも、気のせいだな。
きっとこのめでたい雰囲気にあてられただけだ。
「おーい、とさか君、この食べ物美味しいよ!」
俺は、食べ物を手にして呼んでいるフレオンの元へ向かっていく。




