第12話 アウル安定
だから森の奥へとどんどん逃げるんだけど、女の人がずっと追いかけてくる。
しつこいな。
なんでこっちにかまうんだよ。
俺は、嫌われ者のやっかいな吸血鬼なのに。
そんな風に考え事をしていたせいだ。
「うわっ!」
がむしゃらに走っていたら崖から落ちそうになった。
危ない、と思ったら女の人が手を掴んで引っ張ってくれた。
けど、子供一人をささえるだけの力はないみたいだ。
ずるずると女の人まで落ちそうになってしまう。
「お前まで落ちるぞ!」
手をはなせばいいのに、「見捨てる事なんてできません!」と言ってくる。
馬鹿なんだ。
きっとそうに違いない。
だから「吸血鬼でも助けるのか!」とそう言ってやった。
それなら、きっとこの手をはなすはずだ。
このつないだ手を「だから、何ですか。大切な命である事に変わりはありません。吸血鬼でも獣人でも、エルフでもハーフエルフでも、人間でも、みんな同じ命です。大切な命なんです」離さなかった。
きっとこの女の人は、自分が落ちる瞬間になっても、この手を離さないだろう。
事実、もう落ちるところだった。
かけつけてくれる奴らがいなかったら。
「うわっとっと、マリンちゃん、大丈夫か?」
「ふぅー、ギリギリセーフ。とさか君その手を離さないでよ。僕がまとめてひっぱりあげるから」
俺は崖の上に引っ張り上げられた。
助かったのだ。
自分も危なかったのに。
助けてくれた奴らがいたから。
変なやつだった。
でも、不思議と嫌いにはなれない。
なんでか、力になってやりたいと思ってしまう。
そう思うと、頭の中に不思議な光景が蘇った。
それはあり得るはずのない光景だ。
なかなか懐かないうさぎの散歩で困っていた時。
優しそうな女の人とか、頼りなさそうな男の人とか、アホそうな男の人とかが集まって、手伝ってくれる光景。
皆やさしい顔をこっちに向けていた。
信じられる人達は、確かにいるんだとそう思えてきた。
あいつはきっと、どんな奴がピンチになっても助けるんだろうな。
獣人でもエルフでも、吸血鬼でもかんけいなく。
そう思ったら、なぜか胸のつかえがとれたような気がした。




