第11話 子供アウル
『子供アウル』
気が付いたら知らない場所にいた。
森の中だ。
そんな場所に移動した覚えはないのに。
覚えている記憶は、親しくしていた人たちから裏切られたあの瞬間まで。
思い出すと、苦い思いがこみ上げてくる。
最初から信頼しなければ、こんな思いをせずに済んだ。
ひょっとしたら分かってくれるかも、なんて思わずにすんだ。
そのしっぺ返しがこれだ。
期待していたのが馬鹿みたいだった。
他の種族の人間なんて、他人なんて信用しなければよかった。
胸の中のもやもやとした感情を抱きながら、知らない森を歩いていく。
けれど、森は広い。
どこに向かって歩いているのか分からなくなりそうだし。このままだと遭難してしまいそうだ。
もしかしたら、遭難してしまうかもしれない。
あの得体のしれない者達から離れるのに夢中になりすぎた。
失態だ。
もっと冷静にならなければならなかったのに。
でも心の中を、拒絶の感情が支配していたんだ。
「アウルさんにはたくさん助けられましたから、今度は私がアウルさんを助ける番です。安心してください。どんな事があっても、私が守りますから」
声をかけてきた女の人は人間だった。
守ってくれると言っていた。
優しそうな人間に見えた。
けれど、騙さらない。
どうせ、他人なんてみんな一緒なんだから。
でもその後の行動は失敗だった。
一刻も早くあの場から立ち去りたかった。
だから、向かう方向も決めずにがむしゃらに走ってしまった。
けど、現状は途方にくれているのだから。
俺一人でだって、なんとかなる。
人の力を借りなくたってどうにかする。
そんなつもりだったのに。
どうしてこんなにも無力なんだ。
自分の至らなさが泣きたくなる。
ふがいなさが情けなくなる。
もっとしっかりしていれば、もっと気を付けていれば。
こんなに後悔ばかりにまみれる事もなかったのに。
足がつかれてきたな。
森の中の道は案外歩きにくい。
でこぼこで、こんなに消耗してしまうとは。
休憩していたら、どこからともなく獣たちがやってきた。
一目で腹を空かせているのだと分かった。
こんな所で死にたくない。
とびかかってくる獣をよけて、すぐさま逃げた。
けれど、そいつらは殺気をまきちらしながら襲い掛かってこようとする。
もう駄目だ。
そう思った時、さっきの連中がやってきた。
「フレオン! 獣たちを寄せ付けないようにしてくれ。マリンちゃんはアウルをつれて逃げるんだ! ミュクゼは下がってろよ」
「分かった!」
「はい!」
「わ、分かってる」
けど、信用なんてできない。
助けてくれた?
だから何だ。
あの時以上の、もっとひどい目に遭わないとは限らない。
初めから、みんな信用しなければいいんだ。
そうすれば、こんな気持ちになる事、もう絶対にないんだから、




