第10話 ミュクゼ安定
そいつはどこか頼りない印象を抱く男だった。
馴れ馴れしい態度で「心配したとか」「大丈夫か」とか言ってくる。
こいつは一体なんなんだろう。
それで、そいつはあれこれ状況を説明してきた。
未来の俺の友達とか言ってるけど。
それで、鏡で俺が縮んだとか。
焦ってるのか、説明が下手でうまく伝わらない。
警戒していたら、ぐうとお腹がなってしまった。
ずっと森の中を歩いていたから、腹が空いてしまったのだろう。
おなかを抑えていると、そいつがおにぎりとかいうのを差し出してきt。
見たことのない食べ物だ
でも、自然と美味しそうだという感情が湧いてきた。
知らない人間からの食べ物なんて、と思ったけど気が付いたら口にしていた。
おいしい。
予想に反して、それはすごくおいしかった。
なんだか懐かしい感じもする。
まるで、何度か過去に食べた事があるかのようだ。
そんな思い出存在しないのに。
なぜか、心があたたかくなってきた。
一人寂しくどこかの部屋で書類を片付けているところに、数人の男女が入ってきておにぎりをさしだしてくる。
そんな光景が頭に浮かんできた。
これ、食材はなんて食べ物なんだろう。
みたことない白い粒がたくさんある。
「それはお米って言うんだ。大きくなったお前も気にいってた食べ物何だぞ」
おこめ。
聞いたことない。
そういえば両親が森の外には色々なものがあるっていってた。
俺にそれを見せたいか掟をやぶって、外にでたんだって。
『たくさん物を見て、たくさん世界をひろげるのよ』
『もっと広い世界で生きて欲しんだ』
あれ?
そんな事いってたよな。
だから、俺達は森を出て。いろんなものを見るたびに出ようとしてたんだ。
それは全ては、俺の事を思っての判断だった。
大切な事なのになんで忘れていたんだろう。
そうだ、俺は両親に望まれていた事があったじゃないか。
無念を晴らしてほしい、なんて思うわけがなかったんだ。




