第9話 フレオンの心境
『フレオン』
僕は運が悪いらしい。
道を歩けば、落とし物をするし、動物のふんをふんづけちゃうしで、毎日災難だ。
でも、とびきり不運だったのは、殺人現場に出くわしてしまった時。
あの時ばかりは「人生終わった」と思ったよ。
でも、助かった。
獣人だったから、犯人は僕を殺さなかったのかもしれない。
僕は見逃された。
獣人は、よく子供でも力の強い者がいるから、犯人もそう思って口封じより逃走を選んだのだろう。
実際はひよわだったから、危なかったよ。
でも、ピンチはそれだけじゃない。
犯人が落とした凶器を拾い上げちゃって、それを第三者に目撃されてしまった。
それで、僕が犯人にされかけたんだ。
でも、とおりすがりの少年が証言してくれたから、なんとか事なきを得た。
この恩は、返しても返しきれないよ。
結局、同じような現場に居合わせて、濡れ衣をきせられちゃうんだけどね。
それでも、あの時は本当に助かったし、嬉しかったんだ。
だから、もしその人が困っていたら、何か助けになれればいいなと思ってたんだけど、
今、ちょうど困っているみたいだ。
目の前を、あの彼がふらふらしながら歩いていく。
何かあったのかな。
僕は両親から、恩を受けたなら必ず返さなくちゃダメだって言われてる。
だから、恩の返し時がきたら、迷わずに行動するべきだと思ってる。
うん、そうだよ。
入学式で、再会したばかりだけど関係ない。
何か困った事があるなら、力を貸してあげなくちゃ。