第2話 手のひら返し
クラスメイトの一人。女子生徒が、他のクラスの生徒達に囲まれている。
男子も女子も輪を作って、その子が移動できないように妨害しているみたいだ。
なんかもめてるって、一目でわかる光景だな。
教師は、いない。
あたりをキョロキョロしてみても、頼りになりそうな人間はいなかった。
いつもこうなんだよな。
イベントだから、そうなのかもしれないけど。
どんな時でも、こうやっかいそうな事が起こる時は、生徒だけっていう。
先生、もうちょっと校内を見回りしてもいいんじゃないですかね。
遠い目になりながらも、視線を戻す。
「あなたの両親って罪人の島の出身なんですってね。知らなかったわ」
周りの人間達は蔑んだ視線を、中央にいる子に向けていた。
中央にいる子はおろおろ。
誰かに助けてほしそうな視線を向けるが、それにこたえる人間はいない。
「同じ学校にそんな生徒がいたなんて。驚き。こんな話が広まったら、皆どう思うでしょうね」
はぁ。
流れがよめてきたぞ。
それで、他に人間にばらされたくなかったら、言う事きけってやつだろ。
まったく。
どうしてこう。
そういうのって、やる事がわかりやすいかね。
「この話を黙っていてほしかったら……」
現場と会話の流れの期待を裏切らないな、ほんと。
俺は、やむおえず割って入ろうとするのだが、先にアウルが割り込んだ。
「親がそうなら、子もそうだといいたいのか?」
しかもマジギレしようで。
「お前達はいつもそうだ。こうも鮮やかに手のひら返しされると、一周まわって称賛したくなる」
おーい、瞳からハイライトが消えてるぞ。
俺は仕方なしに「あっ先生。こっちでなんかもめごとが起こってるんですけど」みたいなテンプレセリフを吐くことになった。
え? もちろん先生なんていないよ?
残念な事に、足音一つしてない。
それで、俺のセリフを聞いた連中ははっとした顔になる。そして、青ざめた顔でその場から離れていった。
はいはい、他の人間はさっさと散ってね。




