第8話 アウルの心境
『アウル』
吸血鬼の隠れ里が滅びて、お世話になっていたお屋敷でも酷い事になってしまった。
石をなげられて、追い出された。
私が持っていたものはすべて没収され、屋敷にいた事実も消され、そんな人間はいなかったことにされた。
だからもう一生、私は自分の種族の事を人にあかさないと誓った。
人は弱くて愚かだ。
かもしれない、という可能性でたやすく暴走してしまうから、真実なんて告げなくてもいい。
適当に付き合うくらいでちょうどいいと思っていた。
学校に通っているのは、身寄りのない私が、なんとかやっていくために必要な知識を身に着けるため。
幸いにも壊滅後に向かった吸血鬼の隠れ里には、お金になるものが残されていたから、資金には困らなかった。
故人の遺品に手をつけるのは躊躇われたが、こちらもお金がないと生きていけない。
詫びはあの世でしようと思った。
そんな私の前を、どこかで見たような少年が通った。
私がよくかよっていた養鶏場の、密偵(?)をしていた少年だ。
バレバレだったので、養鶏場の主はその存在に気が付いていたらしい。
私が「あの少年がのぞきしてますけど、あれは一体なんなんですか?」と問いかけたら、「自分家の養鶏場が貧乏だから、俺の所を参考にしようと思ったんだろう」と教えてくれた。
そんな少年は、隠れ里の恩人でもあった。
結局里は壊滅してしまったけれど、彼の言葉があったから、里の皆はわずかな間でも生き延びるの事ができたのだ。
その恩はけっしてなくなりはしない。
しかし、大きくなった彼は暗い顔だ。
何かあったのだろうか。
私は恩知らずなどではない。
人間は好きになれないが、みんながみんな同じ愚か者だとは思っていない。
だからもし、何か困っている事があったら、手助けをしたかった。