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第5話 普通の事



 これは行動をかえるべきかな。


 なんて思いながら自分の席でうなっていたら、フレオンから話しかけられた。


「とさか君、なにか企んでない?」


 どっきんこ。


 俺は内心の狼狽を表に出さないように、取り繕う。


「な、なんにもしでないですにょ?」


 しかし、誤魔化そうと思ったら、そっこく自白してしまった!


 なんて、口だ。


 俺の口はこんなにポンコツさんだったのか!?


 するとフレオンはため息。


「はぁ、いいんだけどさ。もうちょっと器用にできなかったの?」


 おおう、他の攻略対象達ほど頭がいいわけではない、フレオンに呆れられるとは。


 ひどかったのかな?

 そんなにバレバレだった?


「エルフほどじゃないけど、獣人も耳がいいからね」

「左様ですか」

「できれば面倒なことには巻き込みたくなかったら、冷たく言ったんだけど、僕もそういうのは苦手だったみたいだね」


 そりゃもう。


 だって、お前いいやつだし。


 おまえにかかわらず登場人物全員そうだけど。


 フレオンはためいきを吐く。


 絵になるため息だ。


 男だからときめかんけど。


 きっと、マリンちゃんだったらときめくと思うよ?


 うーん、これ本来なら主人公と起こすイベントなんだけどな。


 でも、ぜんぜん絡んでこないし。


 やっぱり、俺が何とかせにゃならんか。


 フレオンは神妙な顔で、例のストーカーについて話してきた。


「関わりたくないんだけどな。ああいうのとは。勝手に理想化して、後で何かあったら幻滅するんだろうね。その手の人間ってほんと質が悪いよ」


 おっと、これは何か過去であったかな?


 ひょっとして歴史の力うんぬんで修正された、過去のエピソード?


「昔、君が僕の濡れ衣をはらしてくれた事があったよね。あの後、また似たような事があったんだ。でも、その時は誰も助けてくれなくて。それどころか、みんな僕を犯人だと決めつけた」


 彼は自嘲しながら「手のひらをかえすのは一瞬だったよ」と言う。


「ああやって現実以上の幻想を相手に見てるタイプは注意した方がいいんだ」

「フレオンはそれで、俺を関わらせまいとしたのか」


 なんだ、病んでてもちゃんと優しい奴じゃん。


 俺のためを思って、忠告してくれたって事だろ。


 そんな過去があったら、そういうトラウマもっちゃうのは仕方ない!


 でも、そんなトラウマもってても、優しさをうしなわなかったのは偉いと思う。


「君は幻滅しないの? そんな事きにしてるなんて……ってさ」

「俺は人からそんな事気にするなんて、ってくらい小さい事を毎日気にしてる自信がある!」

「それは声高に主張する事じゃないでしょ」


 おっと、つっこまれてしまった。


 でも、事実だし。


 鳥畜生。


 やつらは絶対に許せん!


「でも、ふーん。そっか。別に特別な事じゃなんでもないんだ」


 ひょとしてフレオンは、そういう事思ってる自分、悪い子!


 とか思ってたのか?


 だから、相手にイラついてたんじゃなくて、一周まわって自分にいらついてたの?


「いやいや、人間……じゃない獣人だけど、人間だって誰だってそういう悩みの一つや二つもってるって。それは特別な事なんかじゃないだろ」


 すると、フレオンは少しだけすっきりした顔になった。


「なんかありがと、ちょっと胸がかるくなったかも」


 そして、人好きのする笑みを浮かべてお礼を言って来た。


「無理してなおさなくてもいいと思うぞ。お前は自制が聞いてるし、おかしくなんてない」

いいってことよ。


 今回の事で俺は、少しは力になれたかね。


 これで、少しは病みが小さくなれたらいいんだけどな。







 あ、まだストーカーの問題解決してなかった。







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