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第7話 ミュクゼの心境
『ミュクゼ』
俺は、ハーフエルフだ。
両親は数年前に他界した。
それは両親が犯した罪を考えれば、自業自得だったのかもしれない。
けれど、俺にとってはかけがえのない親だったのだ。
両親を殺した者達を許せない。
いつか復讐してやる。
そう思って、今まで生きてきた。
この学校に入学してきたのは、その仇の一人がいると分かったからだ。
俺は、さっそくそいつの事を調べようと思った。
けれど、見覚えのある人間を見つけてしまった。
大きくなっているが、彼は過去に一度俺達を助けてくれたものだ。
彼は何か困っているのか、暗い顔で目の前を通りすぎていった。
声をかける人間は何人かいたが、それにも気が付かなかったほどだ。
一体何があったのだろう。
俺は、彼にまだ恩を返していない。
復讐は大事だが、恩人を助ける事も重要だ。
それは忘れてはいけない事だと思った。
復讐に我を忘れそうになる日があったが、彼がくれた時間を思い出して、俺はいつも自制していた。
何か、問題があるのなら、今度は俺が彼を助けなければならないのだろう。