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第1話 巨大ケーキとの出会い
今回は回想から始めようかね。
よっこらしょ。
俺、子供の頃に冬になって初めて知った事がある。
前世持ちならではの驚きだよな。
この世界の常識とか、規則とかにびっくりするやつ。
まあ、それはそう大層なもんじゃなかったんだけど。
それは雪の降る中、人の多い通りをかきわけて、町の広場に言った時の事だ。
めちゃ寒い思いをしながら、そこに向かった俺は、巨大な食い物を見た。
最初はでかすぎて、食い物だと分からなかったけど。
寒さの中、凍り付きそうな鼻でも分かるくらい甘い匂いがしたからな。
『父さん、母さん! あれ、くりすますつりーみたいだな!』
『くりすま? 何だって』
『何にせよ、初めて見せたのだから、驚くのも無理はないわ。ねぇ、あなた』
『そうだな。ほら、おいでもっとケーキがよく見えるように肩車してやるぞ』
俺はその時思った。
町の中央に鎮座した、縦型ブッシュ・ド・ノエルみたいなケーキを見ながら。
この世界にもクリスマスみたいなイベントがあるんだな。
って。




