うさちゃん
吾輩はうさちゃんである。
オスなのになぜか、そんな名前をつけられてしまった。
はなはだ遺憾の意である。
しかし、このさいそんな事はどうでもいい。
正直よくはないが、今はどうでもいい。
吾輩の住みかが、かなりぼろい。
体当たりしたら、ぐらっとするくらいぼろい。
そのうち倒壊して、吾輩をぺしゃんこにするのではないかと心配になるくらいだ。
しかし、吾輩ではどうにもできない。
吾輩は籠の中の鳥、ならぬ兎である。
だから、誰かになおしてもらうしかない。
そういう事なので、誰かに気が付いてもらうため、一生懸命鳴いていたのだが、誰もこない。
驚くくらい誰も吾輩の小屋にこない。
そのうち、鳴くのに疲れてきて、吾輩は無気力になってしまった。
このまま吾輩は、一匹寂しくボロ小屋で生涯を終えるのかと思っていた。
そこに、「こんなところにウサギ小屋があったんですね」一人の娘が現れてから事態が急変した。
吾輩の小屋は頑丈になり、新しい飼い主も見つかったのだ。
なんという幸運だろう。
女神がいるなら、まさにあの少女のようなものだと思った。
吾輩は、この恩を忘れずに大事に記憶にとどめておく事にした。
いつかあの救世主が困った時には、吾輩が力を貸してやるのだ。
うむ、何か疲れた時は吾輩の小屋に来て、体をなでさせてやっても良いぞ。
吾輩の毛並みは、凡庸な顔つきをした小僧から「すーぱーきゅーてぃくる」と言われたようだからな。
意味はよく分からないが、高品質と言う事だろう。
思う存分癒されるが良い。




