第5話 助けられる俺
ヒロインの女子力によって服を修繕されたアウル。
彼は、こちらの存在に気が付いて近寄ってきた。
「何をやってるんですか」と訪ねてくる。
「見ての通りだよ」
と言うと「そういう意味ではなく」って感じの顔をされた。
ちょっとひがみがでてしまった。
不親切だったな。
とりあえず俺は、ここで針仕事するようになったもろもろの事情を話した。
「なるほど」と理解を示すアウルは、俺の手元を見て眉をひそめる。
「紙屑?」
そんなもん誰が刺繍するんだよ。
あえて表現するもんじゃないだろ。
これは花だよ、花。
かすりもしてねーじゃねーか。
俺、そんなにひどい作品になってるのかな。
マリンちゃんがアウルに「失礼ですよ」って言ってる。いい子だ。
注意されたアウルは嘆息して、俺の手元に指導を入れてきた。
「根本的に指使いがおかしいですよ。針をもっていくなら、その先に指をおかない」
おっと、それってツンデレ?
それからもアウルは、あれこれと指導してくれた。
そのおかげで、少しは手つきがマシになった、気がする。
怪我はしなくなったな、うん。
「人のためにそんな事に時間を割くなんて、あなたは物好きですね」
最後にアウルは、ちくちく刺すような言葉を添えてきた。
嫌味かな?
そう思っていると、彼は忙しそうなミカエラたちを見回して続けた。
「あなたには借りがあります。放課後少しの時間でよければ見てさしあげてみいいですよ。他の方達は貴方の指導をしている余裕がなさそうですし」
あ、やっぱツンデレか。
野郎に親切されても微妙だけど、助かるっていえば助かるかな。
攻略対象達って、なんか全体的にスペック高いし。
手芸の腕前も、さっきの聞けば相当高い事が分かるし。
しかし俺、攻略対象達を助けるどころか助けられてるな。




