第10話 帰ったらちょっと泣こ
『俺』
はぁー。これからどうしよう。
やっぱり原作通りにすすんでいくのかね。
俺のやった事は、無駄で、ヒロインちゃんが攻略対象の心の傷を癒していくと、そういう感じか?
むなしい。
がっくりしながら、俺は学校の中を通りすぎ、帰路につく。
とぼとぼと歩き続けていると、誰かが俺の前に立ちはだかった。
えっ、何?
それじゃ進めないんだけど、新入生いじめ?
この展開、これ以上俺の心をうちのめすの?
もう打ちのめされる余地がないくらい、めった打ちされてるけど!?
じゃっかんムカつきながら、地面とみつめあっていた視線をあげる。
すると、そこにはなぜか決意に満ちた顔をした攻略対象達が。
んんっ?
何事?
攻略対象達が、総出でモブにからむイベントなんて原作になかったよな。
どうなってるんだ?
彼等は口々に、悩みがあったら相談をうんぬん。
何か困っているなら手を貸そう、うんぬん。
力になれる事があったら、遠慮なくいってね、うんぬん。
と話しかけてきた。
ははぁ、俺があんまりにも暗い顔をしていたから、ほうっておけなかったっていうクチか。
さすが攻略対象だけあるわー。
自分も病んでて大変なのに、人の心配までできるなんて。
聖人かよ。
でも、今そういう気分じゃないんだ。
俺は愛想笑いしながら、彼等の申し出を断った。
はぁ、帰ったらちょっと泣こ。
それにしても俺が断った時、彼等がちょっと悲しそうな顔をしていたように見えたけど、気のせいだよな。




