目眩
私とお嬢は促されるままトンネルの中へ入った――。
何の説明もないまま、何の躊躇もせず。
今更だが少しくらい彼女を疑っても良かったのかもしれない。そう思えて来た。
中は暗闇で、灯りが微かに照らし、先に何が在るかは解らなかった。
このトンネルの暗闇は私を不安にさせ、先を行くお嬢の背中だけが頼りだった。
ここまで私達を連れて来た彼女は、何故か先導せず、私の後ろから付いて来た。
これでは逃げ場がない。
しかし、『第七感』は反応しないのだから、それは――。
スン、スンッ――。
後ろの彼女を気にしながらトンネルを進むと、何やら芳しい甘い香りが漂ってきた。
この香りには覚えがあり、それは不安を忘れさせ私を自然と笑顔にさせた。
「この香り――チョコレートか!?」
「はぁ~。いい匂い」
――いい匂い。ではあったが…。
トンネルの先からは、まるで濃縮されたチョコレートの様な匂いが漂った。
進むにつれ次第に匂いは強く籠った様な、何か熱を感じる程だった。
ムワッとくる匂いは、チョコレートのそれではあったが、私はその強い匂いにクラッとしてしまった。
思わず鼻を抓みたくなる様な――。
進む事数分。恐る恐る進んだ所為で時間が掛かったが、トンネルはそれ程長くなかった。
トンネルの終わり、この場所の正体がそこにはあった。
「馬鹿な!?――」
「これって!?――」
「そう、チョコレート工場でし」
『魔法の竹』が生える竹林――その山の中を通ると、チョコレート工場があった。
山の内部に作ったであろうその空間は意外に広く、見た事もない機械や、大きな鍋の様なものの中にはチョコレートらしき液体が入っていた。
「お『姫』さん――貴女のお父さんは、竹の研究をする最中、偶然竹から砂糖を生み出す事に成功したのでし」




