変身
彼女は本気でない。いや、本気だったとしても、本気で手を抜かれている。
その証拠に彼女は、私にではなく、竹槍に打ち込んで来ている。いくら真剣とはいえ、やり方は幾らでもあるだろう。しかし、それすらもしない程の相手だという事なのだ。
次第に腹が立ってきた――。
「終いか?――貴女の実力はこんなのもか?やはり見立て違いか」
「馬鹿にするなー!」
成す術無く弄ばれていた私だったが、怒りに任せ今度は自ら打って出た。
技も、作戦も無い。今までやって来た事と言えば、案山子に突き刺す事くらい。
そんな事が役に立たないことは百も承知。しかし、私はこれしか出来ない。
私は思いっきり彼女に向け、竹槍を突き立てた。
「おーーえす!」
ハッ!――ゴク…。
刹那――私の突き等あしらわれ、薙刀の切っ先が私の喉元に触れる寸前の所で止まっていた。
いつの間にか、持っていた竹槍も何処かへ行ってしまっていた。
もう、どうとでもなれ――。
「――切れ!いっその事、私を切ってみろ!」
「ほざけ――」
と言いながら、彼女は笑っていた。
その所為だろう、今まで見せなかった隙が生まれた。型も無く、彼女は無造作に薙刀を振り上げたのだった。
切る気は無いだろうが、私自身を狙って振り降ろす気だろう。そう思った。
だから、私は――。
第六感が働いた私の身体は、無自覚にも竹槍を拾い上げ、応戦の構えを取った。
その瞬間――私は、私の体が、自分の身体と思えない程の何かを感じた。
―――!
気が付くと薙刀は、彼女の遥か後方へ飛ばされ、床に突き刺さっている。そして、私の視界の端に映ったのは、銀にも似た金色の髪であった。