手放せないそれ
土砂降りの所為もあり、『ニンジン(サッちゃん)』が呼んでいるということで、私達は自動車へ乗り込んだ。
よく考えれば軽率ではあったが、その時にはそんな事を考えている余裕が無かったのだ。
お嬢は『ニンジン(サッちゃん)』と聞いた途端に、もう自動車に乗り込んでいたし、私は雨に耐えられなかった。
もし、私達を狙っているそれが『夫人』以外にも居たら。
それに彼女の言う事が本当だという保証も無く、何者かも解っていないのに――。
黒塗りの如何にも高級そうな自動車――その後部座席。私とお嬢が乗ると、やはり運転手は女性で、彼女以外誰も乗っていなかった。
自動車の中は意外と広く、私達は『魔法の竹槍』を離す事無く車内に持ち込めた。
そんな私達に運転手の女性は私達に一瞥もくれず、操縦握りを掴んだままだった。
「――貴女方は、もうあの場所へ行ってはなりません」
「道場の事か?――」
「えぇ、あの場所は貴女方の居場所ではありません。それにお二人の『力』はあの様な事に使うべきではないはずです」
「偉そうに――大体何者だアンタ?」
「私は唯の運転手です――」
「じゃあ、一体誰が――って、サッ…、『貴婦人』さんよね」
「それも怪しいもんだ。『ニンジン』が勝手気ままに、自動車まで出させるなんて。一体裏にどんな奴が――それに私達を捕まえようとしても無駄だ。その時は容赦しない」
「しかし、お二人は乗って下さった。それだけで十分です――発車致します」
動き出した自動車は私達を乗せ、錬女を後にした。
錬女の校門を出た所で気が付いたが、どうやら雨は錬女一帯でしか降っていなかった様だった――。




