O・H
急に降り出した雷雨は竹槍訓練を中止へと追い込んだ――。
「とんだ雨女が居たもんだ――」と舞子は言っていたが、私はこれで良かったと思った。
私は『姫』であって、『姫』ではない。夫人にとってもそうだ――『私』は『私』でしかない。
私にとって夫人は憧れ――こんな所に居て欲しくない。
やはり夫人は、『おチョコ夫人』でいて欲しい。
――私の意地と罪悪感が、安堵と憧れを上回り、それは後悔へと繋がった。
「甘いな――」
「――ほろ苦い位よ…」
――雨宿りの為、多くの女学生達が錬女の道場へ逃げ込んだ。
奇しくもその場所は、『姫』と『お嬢』が竹槍訓練後に決闘を行っていた場所である。
その場には夫人も居り、教師や憲兵は居らず、事を起こすには好都合であった。
『姫』と『お嬢』を除いて――。
外国人の事など忘れ、ざわつきだす女学生達は、『姫』と『お嬢』の登場基決闘を望む声を上げ、その雰囲気は出て行かなくてはを得ぬものだった。
「どうしよう、舞子――」
「――いや、お誂え向きだ。この状況、夫人が策を練っているとは考えにくい。私達が出て行っても『ニンジン』が襲い掛かって来る事も無いだろう。どちらかと言えば、私はその方が良いが…。今なら夫人と真っ向から見合える」
「言っとくけど、夫人に手を上げたら許さないから――」
私達は夫人と対峙する為、土砂降りの中、『魔法の竹槍』を取りに外へと向かった。
「おー・えいち!!おー・えいち!!おー・えいち!!」
私達『姫』と『お嬢』の頭文字を大合唱している女学生達にばれない様に――。




