霹靂
『姫』と『お嬢』についてはあえて何も言わなかった――。
唯私達二人は決闘しないと決めており、それは私も舞子も、もう戦う理由が無くなったからだった。
元々私は乗り気でなかったし、舞子は『非国民代表』が優先で、今の彼女には『ニンジン』の事で頭がいっぱいであった。
そして、竹槍訓練に夫人を招待する事について舞子は、『そんな事じゃ生温い――』と言っていたが、夫人が来れば『ニンジン』が来るかもしれないと言ったら納得してくれた。
有り得ないと思うが――。
竹槍訓練に夫人が来るとなると、その後の決闘を見に来る可能性があった。
勿論『姫』と『お嬢』はやらないが、場合によっては変身し、夫人から『ニンジン』について聞く事が出来ればそれも無駄ではないだろう。
舞子だけではなく、私も彼女について聞きたい事があるのだから。
―――。
そして今、竹槍訓練前、憲兵のご高説を退屈そうに聞いている『夫人』の姿があった。
演説中、女学生達は居もしない外国人の事が気になり、ソワソワと辺りを窺い落ち着かない様子だった。
夫人に至っては、『やはり居る訳がないか――』と言わんばかりに気にも留めていなかった。
――長い演説もようやく終わり、竹槍を使っての訓練の為、皆が竹槍を受け取っていた。
夫人も例外ではなく竹槍を受け取っており、ここまで来たのだからか、どうやら訓練に参加するらしい。
初めて見る、夫人の竹槍訓練。それにもんぺ姿――。
夫人の華麗な姿にもんぺや竹槍は似合わず、今更になって夫人のそんな姿は見たくはないと思ってしまった。
――思ってしまったその瞬間、晴天だった空に雷雲が広がり、雷と共に大粒の雨が降ってきた。
ピシャ!!――と光った雷は暗い空を、そして夫人を照らした。
まるで、夫人自身が光り輝いているかの様に。
――そしてその瞬間私は夫人と目が合い、気のせいだろうか、彼女が私に向かい微笑んでいる様に見えた。




