表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かぐや舞う  作者: 合川明日
♯ 2
62/70

唯唯

 女学生達のあいだで、『ひめ』や『おじょう』の憶測おくそくが多くっていたある日、すで夫人ふじんは事件前の人気をもどしており、それは竹槍たけやり訓練くんれん数日前の事だった。


 あるうわさながされた――。


 『外国人が極秘裏ごくひりに竹槍訓練を見学けんがくに来ると――』


 それは私と舞子まいこが流した噂であり、勿論もちろんうそである。


 よく考えなくとも、そんな事があるわけが無い――ただ、嘘と分かっていても無視むしできないような、気になってしまう様な、そんな注目を集める噂が欲しかった。


 あんじょうというか、女学生達の間で噂は持切もちきりとった。


 それがどれだけ信憑性しんぴょうせいが無くとも海外へのあこがれが、嘘だとうす々気が付いていても興味きょうみいてしまっていた。


 それもそのはず、私をふくめ、本物の外国人を見た事の無い者ばかりなのだ。


 鎖国さこく以前いぜんから外国人など居らず、写真(など)のそれを知る手段しゅだん滅多めったに無く、私も外国人はぼや~と、そんなものだろうとしか想像そうぞう出来なかった。


 唯一ゆいいつ見せてもらった外国人の写真は、私のその印象いんしょうそのもので、ただ々憧れるばかりだった。


 それは夫人も同じだろう。彼女は外国人を、噂を無視できない――。


 そして噂にはこう付けくわえられた。


 『憲兵けんぺいには内緒ないしょで――』


 この噂で竹槍訓練が大事おおごとに成らぬ様、中止に成らぬ様。


 ――私達は、夫人を竹槍訓練へ来させたかった。唯それだけだった。


 夫人を竹槍訓練にきずり出し、憲兵にしごかれそれをほくそむ――初めはそう考えたが、チョコレートの苦みが私をとどまらせ、夫人には唯来るだけで良い、唯それだけで良い、そう思った。


 唯知って欲しかった。竹槍訓練を、そのむなしさを――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ