『様』
公然と『ギブミー・チョコレート』が唱えられ、非国民と化す女学生が増えた事で、喜ぶ人物が校門前で私を待っていた――。
学徒動員での兵器造りで疲れているのに迷惑な事である。
それに彼女の存在は私達『錬女』でも有名で、校門にもたれかかる立ち姿を錬女の女学生達が憧れの眼差しを送っていた。
私にとってそれがどれだけ気の重くなる事か――。
彼女がそこで待つ事は余りに目立ち、彼女が私を待って居る事が知れれば変な噂が立ちかねない――それどころか、周りからどんな仕打ちを受けるか。
考えただけで恐ろしい――ここは素知らぬふりで通り過ぎるしかない。
私は一緒に居たマサの手を引き、早足で通り抜け様とした。
すれ違いざまに手で顔を隠してっ――。
「って、気付かない訳無いだろう――『かぐや』」
「――あら、いらしたの?『舞子』」
「――かぐや、知り合いなの?『西條』様と」
あぁ、錬女でも彼女に『様』なんて付けていたのか…。知らなかった。
よりによって、マサまで――。
「いや…、知り合いというか、付き合わされているというか」
「えっ!?付き合っている!?」
「ちっ、違っ――」
その瞬間、その場に居た女学生全員が私を睨み付けて来たのを感じ、空気が固まった。
サ――。視線が痛い。
――ざわつきだす女学生達に、私は居たたまれなくなり、マサの手を掴み足早にその場を離れた。
しかし、舞子まで付いて来るのだからどうしようもなかった。
「マサ!走って――」
「――かぐや、何故逃げるの?」
「おい!どこへ行く?――待て!『宮本かぐや』!」




