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かぐや舞う  作者: 合川明日
♯ 1 『かぐや』と『姫』
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思い出の竹林

 流暢りゅうちょうに話す彼女と裏腹うらはらに、戸惑とまどいをかくせない私は、彼女にかかえられただちゅうただよっているだけだった。


『私、そらんでる。彼女、空を飛べるんだ――というか、普通ふつうしゃべれるじゃん!』


「サッちゃん、なのね?――貴女あなた何故なぜこんな事を?」


「かぐやちゃんこそ、何故非国民(ひこくみん)なんかに――かみ綺麗きれいね」


「私は、夫人ふじんを助けるために――」


「――私もよ、仲間なかまの為に」


 仲間――。


「そうだ!『おじょう』は――」


大丈夫だいじょうぶ。彼女はもうげたわ――このまま話すのもあれだし、私達も逃げましょう」


 ――私は彼女に抱きかかえられ、その場を飛びった。眼下がんかに小さく見える夫人や女学生達をのこして。


 空を飛ぶという奇跡的きせきてき体験たいけんは、あまりの出来事できごと実感じっかんが無く、いつの間にか私は、『松竹梅しょうちくばい』や、『魔法まほうの竹』がった竹林ちくりんの山へれて来られていた。


 その山頂さんちょう、『松竹梅』が在った場所。そこへった。


 今はもう無くなっている。その原因げんいん、あれは現実げんじつだったのか。今でも信じられない。


 それは今のこの状況じょうきょうも同じである。


「『松竹梅』。もう無くなっちゃったのね。おぼえている?ここでよく――」


「覚えていないわ。貴女の事もついさっき思い出したくらいなの」


 私は『魔法の竹槍たけやり』をはなし、彼女に正体しょうたいもとい素顔すがおさらした。


 もうバレているのだからそれに抵抗ていこうは無かった。


仕方しかたないわ、何年も前の事だもの――大人にったのね」


「私が、私が自分で消したのよ。今考えても信じられない、昔も今も――『サッちゃん』。貴女は一体いったい何者なにものなの?」


 彼女には表情ひょうじょうが無かった――口や目が有り、それがどんなに動こうとも、そこに感情かんじょうべるものはあらわれなかった。


 それでも、その無言むごんの時間は、彼女のこころつくったものだろう。


「――私、『赤紙あかがみ』が来たの。戦場せんじょうへ行く事になったわ」


「――!?」


「今日は貴女に会えて良かった――」


「サッちゃん…」


「――さよなら、かぐやちゃん」


 そう言うと、彼女は飛び去ってしまった。


 私を一人残して――。


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