本当はね
「お、おい――」
後が無く追い詰められた私達――だから私は前へ、お嬢の前へ出た。
お嬢から『ニンジン』に立ち塞がる様――。
そして差し出した竹槍を手放そうとしたその瞬間、私の『第七感』が、危険回避能力が最大限に発動した様な、そんな感じがした。
しかし、それは危険を回避するというより、もう――。
止まりそうな程緩やかに流れる時の中、襲い掛かる『ニンジン』のその手が私に迫る中――私はそれを垣間見た。
――俗に言う走馬灯。それを今見せられている。
私自身忘れていた記憶。松竹梅の花が咲き乱れる竹林に、彼女は居た。
兎型機械駆動模型――イの6番兎『満月』。そう呼ばれていた。
兎型の機械駆動模型に、疑似思考思想を搭載したそれは、私の子供の頃の友達。
身長は成人男性程あり、銀と桃色の塗装。三頭身に特徴的な長い耳。二足歩行。
可愛らしい兎を模した容姿。しかし、機械と分かる見た目は本物の兎と似ても似つかない。
そんな得体の知れない非現実的なものが、何故か私の子供の頃に居たのだ。
しかし私はそれを『サッちゃん』と呼び、見た目や性格、声の質から、その性別は女性型として接した。
走馬灯は、『彼女』と私が仲睦まじく遊ぶ姿を思い出させた――。
子供の時分、その存在に何ら疑問も持たず、誰もその存在が何かも知らず当たり前の様に暮らしていた。
今考えれば不思議でしかなかった――一体何処から来たのか。
『確か、父が連れて来た博士が――』
何故今まで忘れていたのだろうか――当時、彼女は私の親友だったのに。
一番の友達。一緒に暮らしていた時期もあった。
懐かしいな――懐かしいね。
「サッちゃん――」




