甘い甘いチヨコ
「『非国民狩り』に遭うのは、貴女方という訳でしてよ――ここで正直に正体を明かすか、力尽くにでも捕まえられるか。どちらになさいます?」
「――『夫人』と、そう呼ばれているらしいな…。何故、ご夫人がこんな事を?まるで憲兵の真似事なんて」
「チョコレートはね、お砂糖を入れないととても苦いものなの。苦いままではとても食べられたものでは無いわ」
「――?」
「カカオがお砂糖を欲しているのよ――そしてわたくしは、甘い甘いチョコレートを所望するわ」
「私達は、カカオに売られた訳か――」
「貴女方はチョコレートの怖さを知らないのよ。甘美は時として人を狂わす。わたくしだけではないわ、ここに居る全員がそう。そして貴女も――」
「……」
「この娘はね、イの6番ニンジン。通称『貴婦人』と呼ばれているわ――さぁ、貴婦人さん。お二方を拘束して頂戴」
「――イエス、アイアム。ディスイズ、あ、ペン」
――余りの出来事に現実逃避した私は、追憶で目の前の出来事に気が付かなかった。
「――きろ、起きろ!『姫』!」
『えっ――!?』
私の目の前には、襲い掛かって来た人工人間『ニンジン』を、『お嬢』が竹槍で防いでいた。
私を庇う様に。
「起きたか?姫――どうやらこの貴婦人様は、私達を捕まえる気らしい。逃げるから手を貸せ。このニンジンとかいうやつ、すごい力だ!」
「お嬢――夫人」
夫人――。何でこんな事を。
夫人、夫人、夫人――。
「姫…」
夫人。――私の憧れ。
「…姫」
おチョコ夫人…。
「――姫ー!!」
「!!――わーー!!」
――私は夫人に、ニンジンに竹槍を突き立てた。
「おーえす!!」




