阿呆
私が――っと、様子を窺い、飛び出す構えだけをしていた矢先、護送車は出て来た。
突然の事に驚き、まだ準備が出来ていなかった私は、それを見ている事しか出来ずに居た。
しかも、護送車は私とは反対側へ行ってしまい――あっ、という間の事であった。
『行っちゃった――』
唯呆然と立ち尽くす私。今の状況が理解出来ない――どうしよう…。
――「キャーーー!!」
――その悲鳴は放心の私を我に返らせた。
それはどうやら女学生達のもので、その声は歓声の様だった。
黄色い声援――。
私は急いで竹刀袋を開け、魔法の竹槍を取り出し女学生達の居る護送車まで向かった。
――どうやら護送車は動きを止めたらしく、そこには大勢の女学生達が護送車を追いかけ、何かに熱狂していた
護送車後方、群がる女学生達の所為で何も見えない。
群衆の一番後ろの私は、彼女達が何に熱狂しているのか解らず、彼女達は変身した『姫』に気付きもしない。
「――ねぇ、一体何があったの!?」
「――『お嬢』よ!お嬢が来たのよ!」
――やられた!滅茶苦茶かっこ良い事に成っている。
本当は私がそうなる筈だったのに…。
しょうがない。恥を捨つか――。
「すぅーー。っキャーー!『姫』よ~!!」
自演とはいえ、その場に居た女学生達は忽ちに振り返り、『姫』に気付いた。
しかし、その反応は歓声よりも、驚きの方が多かった。
「『姫』よ。いつの間に――」「全然気が付かなかった…」
女学生達は徐々に、私と護送車の間を避け、道を作った――そして、そこで何が起こっていたのか私は理解した。
道着に竹槍を腰に挿し、髪を結って――『お嬢』は護送車の前を立ち塞ぎ、そこに居た。
「阿保丸だしね――遅いわよ『姫』」
「真打は最後に現れるのよ。『お嬢』――」




