今に見ていろ
憲兵署の敷地は意外に広く、囲いに覆われ、それには有刺鉄線が付いていた。
――案の定、憲兵署の閉ざされた正門前には女学生達が集まっていた。
私はその様子を少し離れた角から隠れ見ていた――マサから誘われていたが適当に言い訳をし、後から行くと誤魔化して。
――護送三十分前。竹刀袋に隠した魔法の竹槍を抱え、唯隠れているだけであったが気が気でない私だった。
憲兵署前の道は左右どちらかにしか行けず、私は護送車が何処へ向かうかまでは解らなかった。
私の護送車前へ立ち塞がる作戦は、それは今私が居る方へ来なければ失敗に終わるということであった。
もう、こうなってしまったら運任せである――どうかこちらへ来てください。
――それから程無くしての事だった。
正門前の女学生達が何やらざわつき出した。まだ時間前だというのに、一体何が――。
見つかる事を恐れ、余り様子を窺わないでいたのだが――何か動きがあったのか。ここからでは何が起こったか解らない。
どうする、動くか?――。
――結局動けずにいた私は、様子を窺う事しか出来なかった。
しかし、何かが起こった事は確かで、どうやら門が開いた様だった。
中から人が出て来たのだろうか――女学生達で見えないが、彼女達は左右に分かれ、中央に人影が見える。
何やら女学生達に話しかけているであろうその人物は、彼女達より背が高く男性の様だった。
きっと憲兵だろう。武力で夫人を助け出そうとする者を探しているに違いない。
彼女達の中にその様なのもは居る筈も無く、どうせ冗談半分だろうが、今に見ていろ。
私が――。




