鏡
「それなら衣装も欲しいな。私が黒で、『姫』が白で――変身後の口上は…」
彼女の性格って一体――それより、私もそれを?
「わかった。わかったから、落ち着いて!――貴女のその竹に、何か変わった所は無かった?例えば、松の枝が付いていたとか、梅の花が咲いていたとか?」
我に返り、私の話を聞いたと思えば、蔑む様な眼で見られ、一体何を言っているのかと言わんばかりだった。
「――今、ここに在ったでしょう?竹に松の枝と梅の花が咲いて…」
「何を言っているのか。さっきのアレで貴女はおかしく――」
彼女『お嬢』は、その綺麗な白や銀にも似た色の髪をかき上げ棚引かせた。
私は唯その動作に、その髪に見惚れてしまっていた。
そういえば、こんなに落ち着いて彼女を、『お嬢』をまじまじと見た事が無かった。
そりゃ、女学生達が騒ぐ筈だ。輝いているのだもの、本当に――。
私はどうだろう。『姫』は。
まともに見た事も無かった。自分の顔なのに――いや、違うか。
『姫』もこんなに奇麗なのだろうか?それならいっそ――。
『落ち着け!私!!』
「――そ、そうよ。私の『魔法の竹』がまだ見つかっていないのだから。探さなきゃ」
「何だ、まだ見つけていなかったのか?――そうか、まだか…」
何故か悠長にしている彼女と裏腹に、日は傾き暮れて来てしまった。
さすがに遭難はしないだろうが、山で日が暮れたら事である。暗闇でしかない。
――!?何だ。毛が逆立つ様な感覚が、足から全身を駆け上がって来た。
その感覚が髪の先まで到達した時、私は咄嗟に振り向き、それが危険を回避する為の合図だと悟った。
――何故なら竹槍を構えた『お嬢』が、今にも振らんとしていたのだ。
薙刀を振るう様、横から私の顔目掛け――。




