徒花
「この竹は、今後戦争による物資不足を解決出来る筈だろう。この量産型に品種改良した新たな竹が――」
竹林へ入り、竹に囲まれていたら思い出した――。
私はここへ来たことがある――この竹林だ。そうに違いない。多分、そうだろう――。
そして、この竹は私の父が創ったものだ。確かにそれは、それだけは覚えている。
この妙に持ちやすい太さ、竹槍に丁度いい太さ――。
いつの間にか竹槍専用の竹と成っていたが、この竹は父が『今』の為、人々の為に品種改良して創った竹。
何で忘れていたんだろ――それに、何かもう一つ大事な事があった様な。
確か、子供の頃――駄目、思い出せない。
私は、魔法の竹を探す事等忘れ、唯山の、その頂を目指した。
記憶に間違いが無ければ、頂上にはあれが在る――。
低い山とはいえ、流石に頂上までの道は険しかった。
しかし、私は無我夢中で登った。それを確かめる為に。
この竹が持ちやすく、掴まりながら登り、そのおかげで登り切れた。
徒花――竹の花。
父の創った品種改良された竹。創るその過程で起こった突然変異。
その竹は花を咲かせた――意味等無く。
松の様な枝が生え、梅の様な花を咲かす。しかし、幹は確かに竹――『松竹梅』。父はそう名付けた。
「在った――」
息も絶え絶え、漸く辿り着いた山頂には、赤く小さな花が竹から咲き乱れていた。
やはりここは、この竹林には、私は来たことが有る――そして、この竹は父が創ったものだ。
「お父さん――」
――これが『魔法の竹』なの?




