その噂は
「そういえば、こんな噂も聞いたわ――」
マサの聞いた噂は、私が聞いていた噂と違い、妙に現実味を帯びており気になった。
まるでその事が事実と知っており、そうでもなければ事細かく指定は出来ないだろう。
それにこれは――。
「誰がそんな事を――」
「さぁ、忘れてしまったわ」
肝心な所を――やはり何処か抜けている。
しかし、その人物は一体――何故そんな事を。
私は一日中その噂の事を考えており、その所為で全てが上の空だった――。
「そんなもの、私達への挑戦状に決まっているでしょう――」
放課後――。
案の定、校門前で待ち伏せて居た西條舞子は、やる気に満ち溢れた表情で言った。
その噂の事を話してしまった所為であったが、残念ながら私も同意見だった。
かと言って、彼女程やる気など出はしないが。
「冗談はさて置き――私も聞いたよ。少し違うが、日時は同じだ」
「これってどういう事――」
「のこのこ出て来た非国民を一網打尽にする気だろう――それだけの用意があると」
確かにそれが本当なら、何も無しにはこんな事を言わない。
目的は一体――彼女の言う事も有るだろうが、別に何か目的が有ったとしたら、それは一体。
「貴女は信じるの?――そもそも貴女は、何故夫人が捕まっていると知っているの?」
「――憲兵署へ入る一台の車を見た。あんな高級な車、貴族か特権階級しか乗らないだろうな。だから私は確信した。それだけ」
「それだけ?――」
「――それだけ」
それだけで――こうなると、彼女の言うことも信じられなくなってきた。
ならこの噂はどうだろう――彼女から聞いていたから、もしかしてと思ったが、それも無くなった。
――しかし、妙に気になる。百合女でも流れていた噂。
その噂は――。




