一体誰が言った
「でも、はっきりと非国民狩りに遭ったと言っていたのに、何故こんな噂ばかり広まるのかしら?」
「流石ね、マサ――確かにそうだわ」
相変わらずマサは、間の抜けていそうで、ここぞという所では冴えている。
はっきりと聞いたのなら、その人物に詳しく聞けばいい。
――しかし、一番初めに夫人が非国民狩りに遭ったと言ったのは一体誰だったのか?
何故その人物は夫人が非国民狩りに遭ったと知っていたのか?
あの日、私は『姫』で、決闘の最中で――ダメ、思い出せない。
「でも、私も未だに信じられないわ。夫人が非国民狩りに遭っただなんて…」
「噂なんてそんなものね。皆、信じたくないのよ――それよりマサ、貴女は覚えていて?あの日、夫人が非国民狩りに遭ったと、初めに言い出した人物を?」
「えぇ、覚えているわ――でも、見知らぬ娘だったわ。百合女の生徒じゃない?」
確かに、知っている人物や見覚えがある人物なら忘れない筈。
しかし、微かに覚えている私の記憶では、確かセーラー服は着ていなかった。ということは、錬女の生徒という可能性もある。
仮に、その本人の顔を思い出したとしても、探す事は困難だろう。
それなら、その人物を知っている人物を探した方が早い――。
しかしそれも時間が掛かり、それを行っている時間は私には無い。今日にでも西條舞子が何かしら行動を起こし、それに私も付き合わされるに違いないからだ。
正確な情報さえ解れば、西條舞子の強引な作戦を使わなくても済むかもしれないから――。
彼女の言うことを信じていない訳ではないが、このままだと、夫人が居るか居ないかも判らない憲兵署へ殴り込みかねない。




