まさに――
翌日――。西條舞子から解放された私は、私の通う学校、平塚職業訓練女子学校(通称、錬女)へ来ていた。
おチョコ夫人も錬女の生徒であり、憧れの的でもある夫人の噂で、学内は持切りであった。
学科が違い、学年の違う夫人であったが、私達の学年でもそれは変わらず、それ程の存在なのだった――。
それは偏に、生徒達がチョコレート目当てで夫人を慕っていた訳ではなく、彼女の人柄や、容姿など全てにおいて慕い、憧れていたからだった。
それが夫人の所以でもあった――。
――至る所で噂話をするものだから、嫌でもそれが耳に入って来た。
夫人は非国民狩りには遭っておらず、旅行へ行っているだけだとか、自ら紅百合へ志願したとか――どれが本当で、何が嘘か、彼女達も分かっていない様子だった。
とはいえ、西條舞子の言っていた事も事実かどうか確かめてもおらず、私もだんだん信じられなくなってきていた。
西條舞子は一体どうやってそんな事を知ったのか――。
「そういえば、夫人のご自宅へ行ったのでしょう?――何か分からなかったの?」
「それが――夫人のご自宅を知っている者が一人も居なかったのよ」
「上級生も居たのでしょう?それでも分からなかったの?」
「ねぇ~。でも、夫人って謎の多い人だから」
この大らかで、少し間の抜けた様な彼女は、『福寺マサ(通称、マサ)』。
私の、心の友である。
何故彼女の様な生徒が、この職業訓練学校建築科に居るのかというと――。
私にも分からなかった。どうしても教えてくれないのだ。
唯、彼女はとても力持ちである。




