祖母
『これからだと言うのに――』と、呆れていた彼女を説得し、今直ぐにでも夫人を助けに行きたい気持ちを抑え、私は仕様が無く帰路についた。
まさかこんな事になるなんて、思ってもみなかったの私は、家の用事を安請け合いしてしまっていた。
それがどうでも良い事なら幾らでも反故にし、幾らでも西條さんに付き合ったものを――。
唯、彼女は彼女で、一人ででも動くという。
今日中に、夫人が本当に非国民狩りに遭ったのか、そしてもしそれが本当なら夫人は何処へ連れて行かれたのか、彼女は調べてくれるらしい。
しかし、それは一番初めにやる事で、当然である。
彼女冷静そうに見えて、(チョコレートの事となると)意外と抜けているというか――。
結局、明日決行する事で約束し、今日は許されたのだった。
そして、私の用事というのは祖母の終活と関係する事なのだ。
戦争による物資や食料の不足、それは私の住む所も例外ではない。今はそれなりに巡っては来てはいるが、何時それが無くなるとも知れず、その備えは必要であった。
このご時世、私を職業訓練学校へ通わせられるだけの、少しは裕福な家庭――それが私の家。
それなりに家の敷地も広く、蔵まで在った――問題はその蔵だ。
蔵にあった鉄等は、殆ど軍に回収されてしまったが、蔵の中には骨董品がまだ多く残っていた。
戦争で焼き払われる位なら――老い先短しと、遺品整理も兼ね、祖母はそれらを全て売ると決めたらしい。
「儲かったら、チョコレートをお買い――」
そう言われたら手伝うしかなく、買い取り業者が来るのが今日で、家には私しか居ることが出来なかった。




