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かぐや舞う  作者: 合川明日
♯ 1 『かぐや』と『姫』
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魔法の竹槍

 過去かこでも未来みらいでもない『いま』、地図にっていた国。その国は二度目の鎖国さこくを行った。


 それはその国と外国との分断ぶんだんを意味し、必然的ひつぜんてきに戦争への一途いっと辿たどって行った。


 あらゆる物事が戦争へ向けられ、それは教育も例外では無かった。全ての不条理ふじょうりが正しく、下界げかい鬼畜きちくだと教えられ、正しいか間違いか分別ふんべつをする前には、もうそういう空気にっていた。


 この空気下ではお国のため万歳三唱ばんざいさんしょうするしかなかった。


 戦時下せんじか影響えいきょうは、国民から物資ぶっしをことごとく取り上げていった。


 『しがりません、勝つまでは――』を合言葉あいことばに、鉄や食べ物が不足し、嗜好品しこうひん糖類とうるいなどにも制限せいげんけられるように成った。


 さらに鎖国がちをかけ、他国との貿易ぼうえき遮断しゃだんした影響えいきょうからか、国内での外国製品などの生産、使用、飲食の一切いっさいを禁止した。


 しかし、それにもっとも反発はんぱつしたのが、女学生達だった。彼女達は『ギブミー・チョコレート』と声を上げ、積極的せっきょくてきに海外文化を取り入れ様とした。


 そして何よりチョコレートを取り戻そうとしていた。ただでさえ甘味かんみとぼしい『今』、貴重きちょうな糖類、外国へのあこがれは彼女達をるい上がらせた。


 女学生達の間では、チョコレートはきん以上の価値かちを持ち、チョコレートはそれほどのものだった。


 糖類は貴重だった。国産外国産問わず規制きせいされ、中々手に入れる事が出来るものではなかった。


 しかし、一部の特権とっけん階級かいきゅう貴族きぞくには特例とくれいゆるされていた。暗黙あんもくの取り決めだが『糖類とうるいあわれみの令』と呼ばれ、糖類を自由に手に入れられ、それらで売買が行われていた。


 そんな事一般庶民(しょみん)が許すはずはないと思われたが、そのおこぼれ、横流よこながし品が庶民の元へも流れており、不満ふまんはあれ、それを口に出すものは居なかった。


 それが唯一ゆいいつ摂取せっしゅ方法ほうほうなのだから。


 彼女達女学生の他にも、かくれて海外文化を真似まねる者、行う者は後をたず、そのあこがれは誰にも止められなかった。


 しかし、規制きせいされたそれらの行動は処罰しょばつ対象たいしょうであり、憲兵けんぺいによるまりは『非国民ひこくみんり』と呼ばれ、多くの逮捕者がさばかれた。


 ――人々は鎖国の意味も、戦争の理由も解らず、ただてきしょうしたまと竹槍たけやりき立てた。


 鎖国での閉塞へいそくに、戦争教育で教え込まれた理想りそうと『今』の現実に、その自然と化した空気に疑問ぎもんを持ちながら――。

「社長様、将軍様、ほとけ様。バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!」


 万歳三唱ばんざいさんしょうめられた月に一度の合同ごうどう竹槍たけやり訓練くんれんは、それは、それは大変たいへん有意義ゆういぎなものだった。


 案山子かかしかれたわらかい、親のかたきごとさけび竹槍をす。


「おーえす!おーえす!おーえす!」


 これでもかと突き立てた竹槍に殺意さえ覚えた。


 鬼畜きちく外道げどう、ど畜生ちくしょう憲兵けんぺいからは、昨日さくじつ書きめて来たのか?というほど罵詈雑言ばりぞうごん。聞いているこっちまでおかしくなる。


 まるでみ絵だ、やらなきゃ非国民ひこくみんにされてしまう。しかし、やればやる程(みじ)めになる。お前の仮想敵は丸裸まるはだかなのか?機関銃ではちの巣になるのが落ちだ。馬鹿らしい。


 それ以前だ。問題はそんな事ではない。そんな事はここに居る全員が気付いている。


 こんな事無駄だと思っても、あの憲兵に逆らうどころか、私は何を一生懸命竹槍を振るっているのか。


 ただ一言ひとこと、『NO』と言えたら…。私は弱い人間なのだろうか――。


 思えば、私は今何をしているのだろうか。女学校をって入った職業しょくぎょう訓練くんれんこう。今じゃ戦争の所為せい学徒動員がくとどういんの日々。目標だった『全国ぜんこく建築けんちく技術ぎじゅつ技能ぎのう大会たいかい』は中止になり、兵器を作る毎日。


 もんぺ姿すがたいたについて、目の前のスカート姿の女学生をうらやましく思う今である。


 月に一度の合同訓練は、女学校との合同で行われる。嫌でも月に一度は彼女達に会わなくてはならなく、セーラー服にスカート姿はより一層いっそう私をみじめにさせた。


「かぐや、そろそろ時間よ」


 それでも訓練が終わったその後、私達にはもう一つやる事があった。憲兵や教員が帰り、彼らには内緒にしている乙女おとめめ事。


 訓練などどうでもよく、本番はこれから。


 私達職業訓練女学生と、彼女達女学女子とのあらそい。


 私『宮本みやもとかぐや』と彼女『西條舞子さいじょうまいこ』の一騎打ち。いや、もう一人の私と、もう一人の彼女との戦い。


 『魔法まほう竹槍たけやり』での戦い――。


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[良い点] オリジナルの設定で読者の興味を引いている点 [気になる点] 独自の設定をかなり地の文で説明していますが、文章的にわかりにくいところが多く、読者に伝わりにくくなっています。 たとえば一行目…
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