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ユスタとベルサの異世界トリップ珍道中!!  作者: 蛇湖
第1章 はじめての異世界
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プロローグ

連載スタートしました。ユスタとベルサの大暴走を是非ご覧くださいませ。

 月明かりが差している。

 隣に立つベルサの手を握った。正直、何故夜風が木々を縫って吹いてくるこんな場所にいるのか分からない。森の木々のざわめきが嫌な感じを私たちに伝えようとしてくる。


「お姉ちゃん、」

「ベルサ、貴女何かした?」

「えー!私を疑ってるの!?ひどいよ!」


 笑顔で私を責めるベルサは笑顔であっても少し不安そうに見える。私がしっかりしなくては。


「それにしても、ここなんだろうねぇ。」


 ベルサが不思議そうにあたりを見る。何の変哲もなさそうに見えるけれど、違和感が身を襲ってくる。


「ベルサも、これ感じてるかしら?」


 上手く言葉に出来ない感覚を彼女に訊ねる。


「なんか、ぞわぞわぽわぽわしてること?」


 思っていたよりもこういうことは妹の彼女の方が向いているのだろうか。彼女の言葉に納得して、私は頷いた。


「何だろうね、何にも分からないところに急に放り出されちゃったね、お姉ちゃん。」

「えぇ、私は眠っていただけのはずなのだけれど。」

「私も!」


 夢の中にしては、ベルサがリアル(?)すぎるし、肌に触れる風も音も現実的過ぎて気持ち悪い。




「あ、」


 考え込んでいると、ベルサの声が聞こえて振り返る。既にベルサと繋いでいた手は離れていて、彼女の胸元にある。

 そこにある彼女の指先は炎を灯している。


「あら、」


 思わず、彼女の手を引いた。が、何もそこには無くてベルサの顔を見た。


「ねぇ!お姉ちゃん‼これ!すごいね!」


 ベルサは満面の笑みで私の手を両手で握った。前のめりになりながら話をし始める。


「なんかね、ぽかぽかするなぁなんでだろうって思って力を入れたら火が出たの!」

「そうなの」

「魔法だよ、これ!お姉ちゃんもやって!やって!」

「そうね、出来る気がするわ。」


 漠然とした感覚だが、少し力を込めてみた。すると、水が手の平から間欠泉のように飛び出す。


「水だ!お姉ちゃんは水で私は火かぁ。」

「そうみたいね。」

「他にも属性があるのかな、ほら五行とか!」

「四大元素や白魔法黒魔法のある世界かもしれないわよ。」

「お姉ちゃん詳しいね。」

「…。」


 それにしても、少し風が強くなってきた。馬鹿みたいにずっと立ち尽くしているわけにはいかない。どこかにそろそろ移動しなくてはいけないだろう。

 ここは何なのか、まだよく分かっていないけれど。


「ベルサ、そろそろどこかに向かってみましょうか。」

「了解!じゃあ…」

「あっちが明るい…」

「ほい!」


 ぱた、と何かが倒れる音がして、音の元を見る。私の足元でベルサが木の棒を倒していた。


「よ~しお姉ちゃん!あっちだよ!」

「え、」


 ベルサに腕を掴まれて引きずられていく。


「お前は馬鹿か?」


 ベルサが進み始めた方向は明らかに何も無い道だった。いや、道ともいえないし何なら明るい方とは真逆だ。絶対に良くない方に進む。意地だけで止めようと抵抗するがベルサは私の腕を強く引っ張った。


「ほら、お姉ちゃん早く!」

「っ…」








「お姉ちゃん!」

「…。」


 暫く進んで、ベルサが足を止めた。私の手を引くベルサは何かを指差している。真っ暗の森の中を目を凝らして見ると、地面が盛り上がって小さな丘のようになっている場所が目に入った。木々が覆っていてよく見えない。



「ベルサ、あれが?」

「なんかね、入り口みたいなものがあるの。」

「え?」


 言われてから、もう一度目を凝らして奥を見てみる。詳しくは見えないが確かに何か暗がりが広がっているような気もする。


「よく分かったわね…?」

「こっち来てから色々見えやすいんだよね!」

「そうなのね。」

「うん。」


 ベルサがにっこりとそう言って歩き出した。私も少し後ろを歩いていく。真っ暗なので足元もよく見えないが、軽々と木の根などを飛び越えていくベルサの真似をして付いていった。そうして進んだ先にあったのは大きな洞穴の入口のような場所。


「自然に出来たものではなさそうだけれど…。」

「なんかダンジョンみたい!」


 訝しげに中を覗くもいまいち先は見えてこない。ここまで来たらとりあえず一夜明かせそうならいいだろう。だが、何かを言うよりも早くベルサが飛び出した。兎に角追わないと、と後を追って洞穴の中に入った。



「あ」

「え?」


 ベルサがまた止まり、声を上げた。思わず聞き返したら、彼女が何か発する前に急に辺りが明るくなる。突然の光に目を閉じてしまった。眩しさが少しましになったところでそっと目を開ける。目の前にベルサの紫の目があった。


「お姉ちゃん、大丈夫?」

「え、えぇ…。」


 平気そうなベルサに何が起こったのかを訊ねると少し困ったような感じで周りを見ている。


「なんかね、松明の明かりが点いたの。」

「それで眩しかったのね。」

「あと、出口開かなくなっちゃった。」

「…どうしましょうか。」


 あまりにもすんなり言われて固まる。呆然と彼女を見つめると、にっこりと笑顔で彼女は拳を上に突き出した。


「先に進むしかないね、お姉ちゃん!」

「まぁ、そうね。」

「じゃあお姉ちゃん、進も!」

「……えぇ、そうね。クリア条件もまだ分からないものね。」

「定番なら魔王討伐じゃない?」


 確かにそうかもしれない。だとしたらかなり長丁場になりそうだ。

 ベルサに手を握られる。そのまま歩き出す彼女の隣に並んで、私も足を踏み出した。


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