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もしも仮に好きと言えたなら  作者: わいず
美春side 重たい愛 聞きたい想い 見えていなかった事
10/12

10話

 ありえない、信じたくない。こんな事があって良いの……? そんな思いから私の目の前が真っ白になった。


「私が雪美を傷付けた? あんなに愛していたのに。なんで、どうして」


 どれだけ信じたくないって思っても、これは現実だと伝える様に痛ましく心臓が苦しい。


 他人の言うことなんて、どうでもいいって思ってた。だから私は雪美にあんな事を言った。

 正直気にしなければ良いのにって、やっぱり思ってしまう。


 でも、本当にその人の事が好きなら、その人の気持ちを理解するべきじゃない。そもそも私がしている恋は同性愛。雪美が私と付き合う事への不安や恐怖があっても可笑しくは無い。


 なのに私は、私が好きな人は私のことを愛していて当然。この思いの元、告白は素直に受けてくれるモノと思い込んでいた。


「私なら気にしなかった。雪美も気にしていないって思ってた」


 実際は違った。私が思ってる以上に雪美の心はか弱く繊細だった。どうしても取るに足らない他人の言葉が、気になってしまうみたい。

 きっとあの時、物陰に隠れていたと思うアイツ等を見た時……不安に思ったんだろう。


 私の告白を受けたら、きっと嫌な事を言われる。いつの間にか自分を守る事で精一杯になって……本心とは違う言葉が口に出ていた。


「そんなウソ。雪美の事が好きなら見抜けた筈なのに」


 振られた事を事実と捉えて、ただ私は悲しんだ。

 とても惨めじゃない。愛する人の事を理解しようとしないで、ちっちょ前に悲しむだなんて。とんだ被害者面した面倒な女じゃない。


 私は雪美が感じている不安の気持ちよりも、愛情を優先した。だから、分からなかった。

 雪美が、私の事を傷つけたって想っている事も。私と付き合いたいけれど、ソレが罪だと想っている事も。


「雪美のその気持ち。理解したら私は気にしてないよ。って言えていたのに」


 当然ながら、実際は何も言ってあげられなかった。

 後悔、絶対になんてしたくなかったのに。あの時こうしていれば、どうしてアレをしなかったの? って、脳内で交錯ばかりしてる。


 ねぇ雪美。私……貴女に傷付けられたなんて微塵も思ってないのよ。ずっと雪美と付き合いたいとだけ思ってた。

 私のせいなの? 愛が重かった? そんな事ないよね。

 愛は重たければ、相手はソレに応えてくれる。だから、悪くなんて無い。


 ……いえ、今はそんな話はどうだって良い。考えるべきは、雪美の事。私はどうすれば良いの、雪美を追いかけるべき? でも、追い掛けて何をするのよ。


「また告白でもするの? あんな事を言われたのに」


 知らず知らずの内に私は雪美を傷付けた。私の言葉と愛で。雪美の言葉を借りると、愛する雪美を傷つけた私は付き合う資格なんて……無い。


「雪美の言った通り、私達はもう会わない方が良い」


 それが雪美が望んだこと。私も応えるべき。これでサヨナラするべきなんだ。私だって……雪美を傷付けてしまったんだから。


「…………なんて、そんな事死んでもする訳がないでしょうがァァァッッ」


 しみったれた私が抱く気持ちを振り払うように、叫んだ。空を切り裂くような声は……辺りの木々に止まっていた鳥達を羽ばたかせる程に大きかった。


 気がつけば呼吸が荒くなっていて、私の両脚は雪美が走っていった方向へと脚を進めている。徐々に速く、心臓の鼓動よりも速く走らせていく。


「付き合う資格? そんなの要るわけない。雪美は私と付き合う運命なの。もう決まってる事なの!!」


 私が好きだから付き合うの、私が好きだから告白したの。愛の重さが原因で傷付けたのは悪いとは思ってる。

 でも……ソレが私と付き合わない理由になるとでも思う? なるわけないよね?


「例え神様がダメと言っても、私は雪美と付き合う、絶対にッッ」


 そもそも雪美は優し過ぎるの、私のことを気使い過ぎ。自分を傷付けてまで付き合わない選択をしなくていい。

 だってそうでしょ? ずっと仮初のデートをして、仮初のプレゼントを渡そうとしてた。その時雪美はずっと……私とのデートを想定していた筈。


 私を振った時も泣いてた、泣く程嫌だったの、気づいてるよね。

 雪美はいい加減に理解するべき、本当は私の事を忘れられない程大好きで……あの時の告白の本当の返事をしたいって事を。


「ちゃんとあの日の本当の気持ちを聞きにいく。待ってなさい、雪美」


 隠しきれていない気持ちを私に言ってもらおう。もう"もし仮に"なんて思わせない、仮初の行為は……ここで終わりにさせて、私と付き合ってもらう。


 ブレない私の重い愛、これが私……私はこうやって愛を伝える。今度はちゃんと雪美の事をみて……。

 だから私は雪美を追い掛ける、真実(ほんとう)の言葉を聞きに。

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