コードレス/ネグリチュード (°___°)・・・・
9月ももうすぐ終わるのにまさかの今月初投稿。
次回はなるべく早めに出すつもりです。
突如櫻木は鈴浦の目の前に転送される。
まさかこういきなり場所が変わるとは、思いもしなかった。
目の前には鈴浦が立っていた。
だが様子がおかしい。
櫻木は距離を取りながらサブマシンガンとハンドガンを手に取る。
「君は見たことがある。いや私がここに来た目的が君にある。」
フラフラと千鳥足の状態で櫻木のことを指さしながら近寄ってくる。
あいつは、人間か。
でもなぜこんなにも弱っている。
さっき戦ったのはブックスだったはずだ。しかも開始数秒で帰ってきた。
もしくはBPさんか。
櫻木がそう考えている間に鈴浦はすでに目の前まで移動していた。
とっさに櫻木はよけ、腹部に銃口をつけ、何発も発射する。
そこから鈴浦に正面蹴りを行い、距離を離した。
今音もなく近づいてきた。
「ああやっぱり。データ通り。まさにデータ通り。」
鈴浦は笑いながら口元を隠す。かぎ爪は頬に当たるよう。
「データ通りね。もしかして考察系とか情報収集系の戦い方がメインってこと。」
まあそれなら納得はする。BPさんが負けた理由が。
はじめBPさんと戦った時はまぐれではあったけれど俺が勝った。でも二度も三度も繰り返しているうちに俺が勝つことは徐々になくなりつつあった。
あの人はプロのゲーマーだからか、異様な観察眼から繰り出される相手でも知らない情報や対策をすぐに練っていく。
要は初見対応が苦手な部類。まあここでいろいろな奴らと戦ってるから、少なくともトップ中のトップ以外なら初見でも対応できる。
でもそれさえできずやられたとなると、こいつはかなり強い。
あと俺のことを知っているかのようだ。なんか気持ちわる。
「じゃあ少し計算を訂正。」
そういうと彼はかぎ爪を外し、ライフルを構える。
そのまま放つ。
櫻木はすでに動き出していた。腹部にダメージは与えている。そこを中心にダメージを与えるつもりだ。
櫻木はハンドガンを構え、発砲と同時にライフルをねらって撃つ。
ライフルは弾きだされ、手元から離れた。
片手持ちとか舐めプじゃねえか。
櫻木はハンドガンを前方にへと投げる。
鈴浦はこの行動に理解ができなかった。しかしその視線誘導が、命とりであった。
サブマシンガンから放たれた銃弾が、正面から一点に集中するように飛んできた。
しかし鈴浦は体勢を変えずに腕を大きく伸ばし、離れたライフルを回収する。
そしてそれを盾のように構え、サブマシンガンの銃弾をすべて撃ち落とす。
櫻木はその様子を見て、驚きもしたがそれと同時にいやな顔もした。
こいつ。人間じゃねえ。いや人間だとしても近寄りたくねえ。
まるで心がない、機械のような、哲学的ゾンビみたいな。
1970年にロボット工学者の森正弘は提唱した。ロボットが人間に近しい外観や動作を行うと、感激よりも強い嫌悪感が生じる。不気味の谷とも呼ばれるこの現象。
鈴浦。彼はもちろん人間ではない。ただ量子コンピュータで作られた人工知能であるため、人工知能と同様の成長プログラムもあるが、その能力が規格外である。0から1を知ることはもちろん。しかし鈴浦はそれを瞬時に100でも200でも増やすことが可能。
そう。鈴浦はもう人と呼ぶにはあまりにも遜色がない。
彼は姿を変える。
サブマシンガンとハンドガンを持ち、歯を見せ笑う。
いや、むしろカテゴリー問わず人へとなり替われる。
「おい嘘だろ。」
「嘘じゃないぜ。」
合成音声で作られた声だからか、すぐに変わっていく。
鈴浦は櫻木の存在へと移り変わったのだ。
「目には目を。歯には歯を。そして敵なら敵を。お前と同じなら、なんとかなるか。」
「やべえ。脳が完全にバグるな。」
「そうだな。なにせ」
「「俺が二人いるもん。」」
両者ハンドガンを発砲。
同時におしゃかになり、近接戦へと移行。
動き、視線、速度、何もかも同じではある。
しかしそのスペック差を引き離すかのように鈴浦は強化されていく。
サブマシンガンを構え、発砲。
もちろん櫻木はそれをよんでいたため、後方へと下がる。
下がった時、閃光弾を手に取りすぐさま投げた。
視界を封じる。
スペック差を埋めるなら、俺自身を強化して追い付くのは不可能。成長スピードも段違いだ。
ならそれ以外の方法なら、相手を下へと引き釣りこむまで。
白い衝撃により鈴浦は一時的に視界を奪われる。
なら一発打ち込むまで。
マグナムを手に取る。そして頭を狙い、撃つ。
すると鈴浦はしゃがみ、マグナムを避けた。
どういうことだ。距離は離し、銃も変えた。
いくらヘッドショットを警戒していたとはいえ、サブマシンガンで連続的に狙うなら胴体のほうが当たりやすい。銃弾のサイズが小さいのだ。わざわざ体勢を低くしてまで行うことではないはずだ。
「視界を封じても意味ねえぞ。セコンドハンド。俺はお前だ。視界が共有されていることに、なぜ気が付かない。」




