6殺(むごろし)環状線 其の二十一 ( ˆᴘˆ )ウプ
ちなみに後で次の話も投稿します。
あと番外編も。
互いに走り出した瞬間、彼らは理解した。
今の状態は均衡状態にあると。
だから彼らはこう考える。
この1戦。相手を先越した方が勝つ。
黄昏と陽無はすれ違った。
両者攻撃をしかけ、回避も同時に起こした。それ故のすれ違いである。
しかし黄昏は陽無に目をやらず、違う方向に走り出す。
陽無はそれを追いながらビームを放つ。
十獄療法 猿匠
ビルが崩壊した際に現れた複数の瓦礫を黄昏に投げる。
黄昏はそれに気づき、クナイを陽無に投げる。
十獄療法 牡丹旋
投擲として扱った瓦礫が崩れだし、ワイヤーが飛び出してくる。
黄昏は足を浮かせ、背中を反る。
ワイヤーの攻撃の合間を縫って避けた。
そしてそこから手を地面に着け後転する。
投げたクナイは陽無に当たると弾かれた。
その弾かれたクナイを目にした黄昏は、急いでそれをキャッチする。
必死さが見えたぞ。
十獄療法 丑裂
黄昏はその攻撃に対し、陽無の腕を掴みそこから頭を土台にして空へと逃げた。
マリオの踏みつけジャンプのように。
武核術 偽欺傀儡
そこから丸太を出現させそれを足場にし、陽無から離れる。
陽無はそれをもう一度追う。
丸太を自衛に回さず、逃げに使った。いや、その方が良いのだろう。
黄昏の現状はHP1であり、たとえスーパーアーマーの場合でも、1回当たれば即死する。
瀬戸際の状態なのだ。スーパーアーマーなんて飾りのようなもの。その位のそれでカウンターを仕掛けるのは自殺行為に等しい。
でも、その一手は首を絞める結果となるぞ。
陽無のステータスと黄昏のステータスはひらきがなく、同等である。
しかし、陽無は知っている。
彼は何度も言うが医者なのだ。それも、戦闘型の医者。
彼の悪癖。言うなれば職業病の類である。
陽無は基本相手との対面に会った瞬間、相手の身体の動きを見るだけで全てが分かるのだ。それも無意識下によるものである。
よく映画やアニメでも歩くだけで強さがわかったり、腕の動作が一瞬止まったりすると怪我していると分かるような感じである。
しかし陽無はそんなものでは語ることの出来ないものである。
ただ相手が歩くだけで、全てを見透かす観察眼。
それは相手の情報を全てキャッチするようなものである。
体の状態も、次に行う行動さえも。
陽無の放つビームは直線軌道を描き、黄昏に近づいてくる。
黄昏が向かった先は、とある住宅地。いや、日本で有名な電波塔のような建物に向かっている。
白では無い。赤だ。
黄昏は建物を壊しながら進むビームに気づく。
そこからクナイで道路標識に傷をつけた。
そしてその傷口を局所的に蹴り続ける。
道路標識が折れた時、黄昏はこれを持ってまた走り出す。
「いいもんもあるんやな。」
十獄療法 牙矛
ビームによって作られた道に陽無が現れる。
陽無は自身にワイヤーをつけることで半強制的に肉体を限界まで動かしたのだ。
陽無家直伝の身体操作。
それは、黄昏の速さを瞬間的に超える。
「見つけた。」
どうやってここまで。いや、むしろ今は辿っていかんと。
黄昏は方向を転換し、陽無に当たりに行く。
陽無は不意に来る黄昏に慌てることなく、ワイヤーを解いて攻撃に移行。
すると陽無の顔に手に持っていた道路標識が直撃する。
当然無敵状態のためダメージは無い。
だがそれは精神的苦痛を与えること。プライドに傷をつけることに変わりは無い。
黄昏はそこから道路標識を地面に突き刺し、持ちながら身体を浮かせ、陽無を両足で蹴る。
陽無はそのまま攻撃をくらうが、衝撃も来ないため意味の無いものとなっている。
だが黄昏はまた陽無を足場にし、もう一度逃げる。
こけにしやがって。
陽無は黄昏をまた追う。
しかし今回は黄昏との距離はそこまで離れていない。
そのためすぐさま追いつく。
「はあ。同じやろ身体能力は。」
「少し違う。今の状態はお前よりも早い。」
陽無はビームを追尾型に変更。
その時、2人は目にする。
明星と日喰比。
両者領域を展開。そして日喰比が現在優勢。
だからこそ、陽無の砲撃の行方は日喰比へと変わる。
2人は彼らを通り過ぎると、追尾型のビームが日喰比を襲う。
攻撃。一体いつ。
日喰比はビームを後ろに下がりながら避ける。
爆撃による範囲ダメージを考慮したが、まさか複数弾飛んできたことが幸いなのか、我輩に当たる前に爆ぜるとは。
距離を引き剥がした。偶然。
いや、多分陽無か或時の仕業か。
なら好都合。逆転の余地はある。
「臨海プロトコル開始。」
すると明星の周囲にあった金属が消えていく。
日喰比はそれを警戒した。
金属の気体化。違う。これは
「もう遅い。既にチャージは完了した。」
明星の体に青い稲妻が走る。
「ハンターハンターのキルアみたいだな。」
だがまずいな。大技を放つ準備が完了してしまった。
あの砲撃で距離が離され、かつ金属の気体化を警戒してしまった。我輩の落ち度という・・・訳はないだろう。
どの道この一撃で終わらせようとしていたさ。
陽無と黄昏は並走しながら攻守を入れ替えて戦っている。
そして黄昏は電波塔の鉄骨を跳びながら上へと駆け上がる。
しかし陽無はそれを追わない。
ビームは黄昏を追尾する。
黄昏が展望台まで駆け上がると、そのままガラスをぶち破り屋内に入る。
ビームによる爆発がガラスを壊し、黄昏を追う。
十獄療法 龍縄
陽無の放つ黒い太縄は電波塔の支柱を全て破壊した。
傾き、倒壊する電波塔。
そこから黄昏は脱出し、降りてくる。
2人の視線が合う。残り10秒。
両者最後の一手が放たれる。
それは向こうも同じこと。
十字の世界はささやく。
この一撃を制した方が勝つと。
「出力:カタストロフィ」
「日喰比劇団 第七幕」
「六武色」
「十獄療法 解の極」
明星は光だし、日喰比はハンマーを片手で縦にまわし、黄昏は白く輝く刀を手にし、陽無はワイヤーを圧縮させる。
「零・イノベーション」
「天喰終円」
「亡者退路」
「虚鳴」
殺し屋コラム
十獄療法について
十獄療法は陽無が使う、人を救い情けを殺す療法。
そのため生にも死にも転換できるとのこと。
元ネタは十二支。
封の極はネズミ・羊。解の極はウサギ・酉となっている。
ちなみに馬鹿ははしかとよむように、ところどころ医療に関する言葉もあればまた違う意味にも転じる言葉もある。




