6殺(むごろし)環状線 其の十六 ( ˆᴘˆ )ウプ
耳切れた。
日喰比は黒色化に突入。
そして1歩踏み出し前へと飛び出す。
上からハンマーを大ぶりするという単純な攻撃。
明星は当然のようにその一撃を余裕でかわす。
しかし日喰比は大振りしたその時、ハンマーの打撃部を即座に明星に向かせ、2激目を与える。
しかしそれも躱す。そこから3激目。躱す。4激目。躱す。
5激目が放たれる瞬間明星は金属の壁まできていた。
そこから放たれる瞬間、明星の体が金属の壁にめり込む。否、潜り込んだのだ。
日喰比は立ち尽くし、辺りを見渡す。
どこに行った。いや、明星は自身の体を金属に変えた。なら気体となることだって。
その時日喰比の真横から激しい衝撃が襲う。
不意をつかれた。
日喰比はすぐさま攻撃された方向にハンマーを振るうが、そこには何も無かった。
すると今度は片足が切断され、体勢を崩してしまう。
そこから今度は体の中から金属が生え、内部からダメージを負う。
金属による連撃。でもこれはスキルの効果を無視しているようなものだ。
「おかしいって思っちゃうよね。」
すると明星が真正面から現れる。
余裕の笑みがこぼれる姿を見て、日喰比は攻撃を仕掛けようとするが、やめておいた。
一番の理由は、彼女の持つ隠し玉がまだはっきりと掴めないことだ。
無策に突っ込むほど日喰比は馬鹿では無い。
「私って金属でもなんでもないんだよ。だってゲーム内でもさ、アンドロイドとかサイボーグには入らない。ただの有機体だよ。でもね、ちょっとしたことでもできるんだ。まあリスクも高いけど。」
そう言うと明星は手の甲を指で掴み、引っ張る。
すると透明の皮が手から離れていく。
「金属皮膜か。」
「そ。一応金属の皮膜を体にカモフラージュする感じでつけてたってわけ。」
なるほどな。つまり明星の金属化もこれが関与しているということか。でも何故今それを、、、
いや違う。これを教えたのは余裕という意思表示では無い。
選択肢を増やすためか。
明星はあえて多量の情報を与えるという弱点が露呈するリスクとともに、戦術の幅広さを広げている。
つまり、対処が困難となるということか。
それに今の金属皮膜。おそらくこれはアーマーとしての役割もあると考えた方がいい。
しかし日喰比はまだ気づいていない。
彼女は現在十字の世界を発動している。
そして彼女の殺人領域は、相手の死角である。
その死角は現在でも、未来さえも見ることができる。
そのため彼女は発動中日喰比の数秒後の動きが先にコマ送りとして視覚情報にインプットされる。
先程の日喰比の連撃を躱し、意表をついたのもこれの効果によるものである。
「じゃあ頑張ってね。」
日喰比の目の前に無数の棘の金属が迫り来る。
日喰比はそれを全て砕く。
そのとき後ろから明星が現れるが、日喰比は咄嗟の判断で後ろに攻撃。
しかし明星はそれを知っているため軽い動作で避ける。
日喰比はその動作を見た瞬間明星の目を見る。
来い。ストリートよ。
日喰比は瞳による共鳴で明星の領域の正体を見破り、そこから半覚醒に入ろうとする。
しかし、それは不発に終わる。
その時黒色化は解除され、明星の手が日喰比の腕を掴む。
じゃあね。
明星の手のひらから金属の刃が生成され、日喰比の腕を切り刻む。
明星はすぐさま手を離そうとするが、離れない。
「掴んだぞ。明星。」
日喰比は明星の腕を掴み返し、そのまま振りかざす。
「うそ。片足のまま。」
明星は地面に叩きつけられた。
その時明星は金属化を起こせなかった。
「はっはー。やはりな。あの連撃とさっきの話を聞いて閃いたんだが、まさかその通りになるとはな。」
明星の金属化は、皮膜の位置と本体の位置を変えることで頭が吹っ飛んでもその頭は身代わりのため本体にはダメージがなかった。
だが原理は簡単だった。
要は一部分だけ皮膜を使って騙し、位置関係をずらす。
例えるなら手袋の指に入る部分に指を入れずにその指を立たす感じか。
だからこうすればダメージが入ると思った。
全体によるものは、位置関係などどうでもいいからな。
こいつ。対処早すぎ。
でも、これは流石に気づかなかったでしょ。
日喰比は倒れた明星にハンマーを振りかざそうとした瞬間、毒ガスが日喰比を襲う。
赤いガス。一体いつから。
「今度こそおしまいだよ。」
明星は地面に金属を広げ、そこに沈んでいく。
すると青色のガスが壁から漏れ出すように出現する。
赤と青。まさか、
明星は櫻木との戦闘の際にスプレー缶を金属で溶かし、中にあるガスをまた新しいカプセルとして保管した。
そしてカプセルを溶かすことでガスが出現する仕組みを作った。
赤+青 紫電核
紫の爆発が日喰比を襲う。
その時日喰比は何故か自身の落ちた片足を回収し、バックステップで離れる。
しかし避難距離が短かったため、爆発によりボロボロの片腕が吹っ飛ぶ。
紫電核の攻撃が炸裂し終わった時、明星は現れ、日喰比を警戒する。
「あれ。まだいたんだ。」
「はっはー。まだ遅いだろ。こっちは今ので調整が完了したと言うのにな。」
チューニング?一体どういう。
その時日喰比が明星のスピードよりも早く手のひらで腕を叩く。
そこから手を地につけて足を回転させ攻撃する。
明星はそれを防ぎ、カウンターを仕掛ける。
しかしそれよりも先に日喰比の発勁が明星にあたる。
その時明星はこの状況の異変に気づき、日喰比に問いかけた。
「あんた。何やったの。どうして足が治ってるの。どうしてみ未来が見えないの。」
「まあ見とけよ。今ので1回分溜まったからな。」
日喰比はボロボロの腕を持っていきなりフラダンスをし始めた。
「知ってるか。フラの表現はハワイでの自然を、森羅万象を表していると。そして偶然か、生命として還元されているのかも分からないが、この通りになるんだな。はっはー。面白いだろ。」
するとボロボロで切り離された片腕が元に戻っていた。
「はは。そうか。そぅだったよ。」
あのフラとさっきの蹴りで思い出した。
フラは再生能力を向上させる。そしてあの蹴りはただの蹴りじゃない。
カポエイラ。戦う踊りだ。
攻撃するとリズムが蓄積し、それを消費してバフを発動させるもの。
「日喰比。お前の正体はダンサーか。」
ダンサー
攻撃する度にリズムが溜まり、それを任意の数使用することでスキルを発動できる。(蓄積量は最大9個。満タンの時にリズムを獲得してしまうとリセットされる。)
スキルの発動に使うリズムは1~3個であり、バフ効果が1個で20%、2個で40%、3個で60%となっている。
「じゃあこちらも舞台は整った。ストリートはしばらく休演だ。日喰比劇団、ステージで戦ってやるよ。」
日喰比の黒い瞳の中心に橙色の十字が刻まれる。
ガンフラ豆知識
マインカースについて
マインカースは特態金属を生成し操ることができる。
しかし金属を操る時は1個1個でしか操ることが出来ない。また、スキルのデメリットで5秒間の行動を不可能にする。
この時明星はスキルと移動、攻撃、防御などの動きも不可能となる。
明星はそのスキルを逆手に取り、自らの周りに金属皮膜を装着し、金属の壁に入るとその皮膜を金属に浸すことで金属内を移動することに成功。
また、金属の操作を範囲かさせることで、状態での操作を可能にさせた。
だが前者は全ての情報が遮断され、呼吸も不可能となるので死ぬ可能性もある。
また、後者は複合のものを単一での操作で行うためかなりの疲労がかかる。
簡単にいったら漫画読みながら小説読みながらゲームしながら音楽聞きながら、まあ「魔入りました!入間くん」でやってたロビン先生の特訓ぽいぐらいの情報統制を行わなければならない。




