6殺(むごろし)環状線 其の十五 ( ˆᴘˆ )ウプ
作成3日かかるというね。
ハンマーが明星の顔面にクリーンヒット。
しかし反射的に顔を防いだのか、明星の体力はまだ微かに残っていた。
日喰比はすぐにハンマーを確認する。
やはり案の定僅かに金属が着いていた。
「はっはー。まさかガードと同時に少量の液体金属を用いていたとは、褒めたたえてやろう。」
「称えなくてもいいよ。その代わり祟ってやろうか。」
「なら或時にでも頼め。金槌を持っているからな。」
丑三つ時かよ。
でもあの一撃変だった。普通位置が交換されればそこからの対処でも、反射的に行なおうにも、僅かな遅れがあるはず。
だからこそ変だった。他との戦闘でたまたま攻撃が噛み合った。もしくは、味方でも当てる前提で攻撃したってこと。
「まあ疑問を払拭するには少し時間がかかりそうだから、教えてやろう。我輩は貴様に当たると見越した上で黄昏と交代したのだ。」
明星はその発言に驚く。
何故彼は、交換した相手が黄昏だと分かったのか。
「しかし本来ならそのようなことにはならなかった。だが貴様はある間違いを起こしてしまったのだ。」
「間違い?というか何故知っている。」
「みなまでは言うな。明星学園の問題児。ガンフラット・オンライン創設者。明星左翼。」
明星は睨むように日喰比を見る。
「お前どこでその情報を。」
「怒るのであらば、妬むのであれば、貴様も同じようにすればいいだろう。」
「分かった。そうするよ日喰比劇団座長。日喰比界帰。」
すると明星の足元に広がっていた金属が日喰比の足を襲う。
日喰比は飛ぶことでその攻撃を躱す。
しかしその時金属はさらに広がっていく。
すると広がった金属は跡形もなく消え去った。
「じゃあ。」
明星が手を左右にふり、お別れを告げるかのような振る舞いをする。
その時、日喰比は大きく息を吸い、大声で叫ぶ。
「はっはーーーーーーーー!!!!!」
甲高くない野太い叫びが辺りに響く。
その時、金属の刃物が空中から出現する。
「しまっ。」
「5秒。まだ経ってないな。」
日喰比は空中に舞う金属の破片をハンマーで吹き飛ばしながら明星に近づく。
破片は身動きの取れない明星に向かって飛び、無数の投げナイフのように体を切っていく。
「ちなみに先程の位置変えによる間違いを答えていなかったな。あれば単純に貴様が我輩らのことをあまり見ていなかっただけだ。」
ハンマーは明星の顎をアッパーカットするかのように繰り出すが明星の頭は液体金属となって飛び散る。
そうか。彼らは協力でもなんでもない。
ただ一人一人で戦い、たまに共闘する関係。
フレンドリーファイアが有効でも、味方を攻撃することも躊躇わない。それが、彼らの持つ協力関係か。
「でも、そんなこと言ってられんのも今のうちだよ。」
明星の体が元に戻ると、最初の防御で付いていた液体金属が移動する。
しかし、ハンマーは溶けずに原型を留めていた。
「はっはー。やはり奇跡とはこのような場面でも起こり得るのか。まさにまさに最高の瞬間だ。」
「なんで、どうして。」
日喰比の武器。原初武器無進化
打撃部は特殊な鉱石で作られたハンマーである。
つまりはただの石。
そのため、金属侵食という影響は受けない。
「まずい。しかも全て対策されているとは。」
「まあこの武器は単に偶然だがな。だが体からいきなり金属の刃が出現するというトリックは1度聞かなければ不可能だったのかもな。」
「まあバレても問題なかったしね。それに、こうした方が私にとって有利に働くからさ。」
日喰比の答えにに明星は笑って返す。
体の中から金属が出現し、内部から傷をつける攻撃。
それは、金属の状態を駆使したものである。
マインカースの効果は特態金属の生成。その金属はあらゆる状態に変わることが可能。
明星はその金属を気体にしたのだ。
気体となった金属は無色であり、空気の中に溶け込む。
そしてそれを吸うと体の中に気体金属が侵入。
そこから固体に変えることで体の中から傷を作ったのだ。
だから日喰比はあの時叫ぶことで肺の空気を出し、逆に気体金属を跳ね返した。
とんでもないやり方だ。
「でもね。ここからが本領発揮ってところだよ。」
すると地響きが起こり、日喰比は地面に膝をつける。
それほど立つことも難しい程の振動が鳴り響く。
その時、地面の中から金属の壁が複数上がり、そこから日喰比と明星を囲むように並ぶ。
金属のフィールド。まさか。
「殺人領域とはまた違う。金属によるリング。ようこそ、私特製のリング場へ。」
明星の足元に金属の柱が出現し、そのまま上へと伸びる。
「テスト開始。」
すると明星の瞳が黒く染まり、十字架を宿す。
それと同時に明星の姿が消えた。
日喰比は突然の失踪に困惑したが、状況をまた改めて理解する。
あれは消えたんじゃない。自らを液体金属に変えて金属内を移動している。ならそのように金属に注意すればいいはな、、
日喰比が背後を向いた瞬間、明星は金属で出来たグローブを身につけ、殴りにきていた。
日喰比は反射的にハンマーで防いだが、それをあたかも知っていたかのように明星の攻撃は1度止まり、そこから大きく軌道を変えて日喰比を殴った。
日喰比は足で防ぎ、そのまま後転して勢いを殺す。
「へぇー。やるじゃん。」
「はっはー。何とかだがな。」
日喰比の瞳は黒く染まっていく。
ガンフラ豆知識
武器種について
ガンフラでは多数の武器があり、その中でも銃火器、近接武器、消耗品と分かれている。
その中でも銃火器は基本メジャーではあるが、近接武器に至ってはほとんどのプレイヤーがナイフを扱っている。
また近接武器には特殊な効果を持つものもある。
例えば日喰比が使っていた原初武器 無進化は、ヒットした箇所にもう一度当てるとダメージ補正がかかるシステムとなっている。




