7:『ジャガの根栽培計画』、始動!
――私がとある提案をしてから一時間後。会議室には笑顔が溢れていた。
誰もがホクホクと舌鼓を打ち、私の作った『ジャガの根』料理を堪能している。
「う~んっ、揚げたジャガの根も絶品だ! サクサクとして美味いっ!」
「シチューに少し入れただけでも満足感が違うっ!」
「蒸しただけのジャガの根にバターをつけて食べるのもオツですぞっ!」
テーブルに並べた料理の数々をどんどん平らげていく領主たち。
国王であるラインハルト様も満足げな表情で口に運んでいた。
「あぁ、本当にこれは素晴らしいな。それにしてもレーナ、よくジャガの根を栽培して食べようなんて思いついたな。たしか毒があると聞いていたんだが……」
「ご安心ください、安全に口に入れるための調理法があるんですよ」
――ラインハルト様の指摘通り、ジャガの根には毒があるとされている。
球根部分を食べてしまうと腹痛や吐き気などに見舞われてしまうのだ。
「昔、少し煮てから刻んだだけのジャガの根を義姉に食べさせられたことがありましてね」
「よし殺しに行こう」
「ってちょっと待ってくださいッ!? ……そ、それでですね、嫌々口に運んだんですけど、ふと気づいたんですよ。『コレ、結構美味しい』って」
小麦などとは違うほのかな甘みがあったのだ。
ひげ根の生えている部分は苦くていかにも毒がありそうな味がしたが、真ん中のほうの白い部分は普通に食べることが出来た。
それから腹痛で寝込むこと三日後。
その時の経験が気になった私は、鉢に植えられたばかりのジャガをこっそりと引き抜き、白い部分だけを煮て食べてみた。
すると、今度は何も起こらなかったのだ。
それ以降、イジワルによって食事を抜かれた日などには、ジャガを少しばかり拝借して摘まんだりしていた。
……どうせ観葉植物の管理は入荷も含めて私の仕事でしたから、バレづらかったですしね。
「――そんなことがありまして、ジャガは食べられる植物なのだと気付いたわけです」
「ははっ、なるほどな! 私を逃がしてくれたことといい、キミは気弱なようでときおり大胆なことをする。
あぁ、ジャガは主に上流家庭用の観葉植物として売られているモノだからな。毒があるとわかって以降、今まで誰も安全に食べる方法など研究してこなかったのだろう」
よく気付いてくれたと私を褒めてくれるラインハルト様。
彼は勢いよく立ち上がり、バッと腕を突き出して領主様たちへ命令する。
「領主たちよッ! 我が婚約者であるレーナの提案を受け、これより国中を上げた『ジャガの根栽培計画』を実行する! 誰一人として餓死させず、必ず冬を乗り切るぞォッ!」
『オォオオオオオオオーーーーーーーーーーーッ!』
雄叫びを上げる領主様たち。
こうしてエーレブルク王国最初の国策が、私のちょっとした思い付きから開始してしまうのでした。
――って、んんんんっ!?
さっきラインハルト様、私のことをなんて言いましたー!?
・唐突な「俺の女」宣言ーーー!
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