4:逃亡の始まり(国王side)
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――レーナ・フォン・セレスティアが『氷の魔将』と運命の再会を果たしている頃、逃げ出した国王たちは森の中で息を切らしていた。
「はぁっ、はぁ、ここまでくればしばらく追っ手も来ないだろう……」
「お父様ッ、足が痛いわ!」
「どうして私たちがこんな目に……」
木陰に腰を下ろす王と、喚く王女に嘆く妃。
その身に纏った豪奢な衣装も埃にまみれ、誰もが疲労困憊という有り様だった。
王城の脱出路から裏手の森の隠し穴までさほど距離はないのだが、全員運動不足なのだから仕方がない。
「ふぅー。まぁこういう時こそ落ち着いて、これからどう復権すればいいか考えようではないか。高貴なる王族の血を絶やすわけにはいかんからなぁ」
「そうねぇアナタ。……そういう意味では、レーナのことは残念だったわ」
今ごろ民衆たちによって嬲られているであろう第二王女を思い、父王と妃は溜め息を吐いた。
――だがそれは、決して彼女のことを娘として心配しているわけではない。
「あぁまったく……マグダレナのヤツめ、国王であるワシに毒なんぞ盛っていきおって……!」
苦々しげに呟く国王。かつて手籠めにした平民の女を思い出す。
彼女はレーナを産み落とした直後、王の前から姿を消したのだ。
あぁ、それだけならばまだよかったが、なんと女は去り際、王のワイングラスに毒を塗っていったのである。
それによって国王は生死の境を彷徨うこととなり、高熱による後遺症として生殖機能を失ってしまったのだ。
これは致命的である。彼には、王家の血を絶やしてはいけないという責務があるのだから。
それゆえ、レーナのことを王家の恥だと冷遇しつつも、第一王女にもしものことがあった時用の『母体』として殺さずに育ててきたのだった。
「まぁよい。レーナの犠牲があったおかげで、純血の王族である第一王女は無事に済んだのだからな。死に際になってようやく役に立ってくれたわ」
「あらお父様ってば、レーナが死んだと決めつけるのは早いですわよ? 今ごろ元気にやっているかも……暴徒たちの腰の上でね?」
「はははっ、たしかにな!」
――犠牲になった少女を笑う王族一家。
彼らの心に感謝などといった思いは皆無である。
むしろ“王家のために役立てたのだから光栄だろう?”とすら考えていた。
まさに畜生の集まりだ。
そうして彼らが『メイド姫』の末路を嘲笑っていた、その時。
「――森に出たぞッ! 国王一家を探せーーーッ!」
「なっ!?」
なんと抜け出してきた隠し穴のほうから、追っ手の声が聞こえてきたのである……!
途端に顔を青くする国王たち。なぜ、どうしてこんなに早く脱出路が見つかったのかと困惑する。
「くっ……とにかく今は逃げるのが先か。おいお前たちっ、宝石類を捨てていけ! 反射の光で気付かれるかもしれんっ!」
「そ、そんなぁっ!」
「早くしろ!」
嫌がる王女と妃だったが、やがて命には代えられないと諦め、血税によって買い集めた装飾品を外していった。
国王もまた王冠を捨てようと思ったが、これは代々受け継いできた王族の証である。
流石に捨てられないと考え、仕方なく足元の泥を塗って輝きを隠した。
「クソォ、本当にどうしてこんなに早く脱出路が見つかったのだー……ッ!」
追っ手たちに聞こえないギリギリの大声で喚きながら、王とその家族は森の奥へと向かっていく。
こうして、彼らの逃亡生活が幕を開けたのだった……。
国王「なんでこんなに早く…」
・娘が(勢いで)チクりました。
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