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3:革命の乙女、誕生(※勘違い)



 ――あぁ、思い出した。彼は、あの時の……!



「気付いてくれたみたいだな」


「えぇ、まさか『氷の魔将』と呼ばれる人物がアナタだったなんて……」


 彼に抱かれながら見つめ合う。

 片目に輝く美しい空色は、四年経った今でも健在だった。


 ――まさに運命の再会といえるだろう。

 だがしかし、今は状況が悪かった。

 ちらりと周囲の民衆を見れば、私と彼をいぶかしげな眼で睨んでいた。


「な、なんだぁ、ラインハルト将軍は憎き王族と顔見知りだったのか……!?」

「一体どういうことなんだ……」

「第二王女っつったら外に出られないくらいの病弱女って話だが、どうせコイツも王族なんだ。ろくでなしにちげぇねぇ……!」


 っ、いけない……このままでは『氷の魔将』の求心力に悪影響が出てしまう。


 民衆の間ではこの私、『第二王女レーナ・フォン・セレスティア』が平民を無理やり孕ませた子だということは隠されている。

 もちろん私を思っての配慮ではなく、王家の威信を汚さないためだ。


 父は名誉にこだわる男である。

 のちの世で家系図から“そこら中に種を撒くような放蕩王だった”と思われぬよう、仕方なしに私を正妻の子としたのだ。

 そんなくだらない設定により、私は民衆たちから敵の一人として見られていた。

 

「みなさん、待ってください……!」


 あぁ、私みたいな女のことはどれだけ馬鹿にされても構わない。今から嬲り殺しにされても文句はない。

 だがしかし、ラインハルト様はこれからも民衆を導かなくてはいけない大事な人なのだ。こんなつまらないことで不信感を抱かせてはいけない。


 一体何から説明すればいいのか。というか私が何か言ったところで、人々は聞いてくれるのか……!?

 

 そんな不安で舌がもつれていた、その時。



「――鎮まるがいい、同胞たちよッ! 彼女こそ、この革命の立役者であるッ!」



 なっ――!?


 私を抱いていたラインハルト様が、いきなり意味の分からないことを言い始めた……!

 その発言にさらに困惑する民衆たち。だが彼はそんなことを一切気にせず、堂々と私を彼らの前に突き出した。


「諸君ッ! 私は一度、邪悪なる妃によって囚われたことがある。しかし、そんな窮地を救ってくれたのが第二王女であるこのレーナだ! その時以来、私と彼女は改革を目指して連絡を取り合っていたのだ!」


 って取り合ってない取り合ってないッ!

 こっちには改革の意思なんてゼロだったし、四年間ずっと音信不通でしたからッ!?

 なんで私のことなんて庇ってるんですかー!?


 ――真っ赤な嘘にもほどがある。

 しかしラインハルト様のような美丈夫がこうも堂々と言い放っては、嘘だとわかる者などいまい。

 次第に民衆たちの間から「そうだったのか」「この子が裏から支援を……」というつぶやきが聞こえ始め、後に引けない状況になっていく……!


 だがそんな中、黒髪の青年ことヴィルヘルムが「待てよ旦那!」と声を上げた。


「裏で協力してたのかは知らねぇが、そいつは王家の血を引く者なんだろう!? だったら敵じゃねえかッ! 今すぐ殺すべきクソ女だッ!」

 

 そうっ、そうなんですよヴィルヘルム様! もっと言ってください!

 私は殺されるべきクソ女です、ラインハルト様の名誉のためにも今すぐズバーッとヤられちゃうべきなんです!


 思わず自分からそう進言しそうになった時だ。

 ――どこか落ち着く石鹸の匂いのする手が、そっと私の肩に置かれた。

 いきなりのことに隣を見ると、一体いつからそこにいたのか、葬式用のドレスを纏った女性が私の側に立っていた。


 彼女は私と似たような色の茶髪を掻き揚げ、ヴィルヘルム様に言い放つ。


「お待ちください、ヴィルヘルムさん。血で敵味方を区別するなら、彼女を殺すべきではありません。だってこの子には、平民の血も流れているんですから」


 なっ、えぇっ!? なんでこの人はそのことを……!?


 使用人の誰かが漏らしたんだろうか。

 外に漏洩しようものなら、使用人全員を死刑にすると父王から厳命されていたはずだが……。


 ともかく謎の女性の言葉で、ヴィンセント様は口をまごつかせた。


「なっ、マジなのかよマリアさんよ……!?」


「えぇ、大マジでございますよ。革命を起こすために多くの情報を集めてきたわたくしが、ガセを掴んできたことなどありました?」


「っ、一度だってねぇよ。じゃ、じゃあ、今までコイツがラインハルトの旦那と協力してたっていうのも……?」


「それもマジでございます。情報漏えいを避けるためにぎりぎりまでみなさまに伝えなかった結果、彼女には怖い思いをさせてしまいました……」


 って何言ってるんですかアナタ!? それ完全にガセじゃないですかっ!?


 ラ、ラインハルト様はともかく、なんでこのマリアさんって人まで私のことを庇うわけ……!?


 一体どういうことなのかとラインハルト様のほうを見ると、


『え、なんでこの人までレーナのことを庇ってるんだ……?』


 という顔をしていた。

 ってアナタも知らないんですかッ!?

 

「あぁ、もう……!」


 思わず小声で唸ってしまう。

 つい先ほどまで死ぬ覚悟をしていたのに、どうしてこんなことになっているんだが……。

 でもこうなってしまったが最後、二人のためにも今さら『嘘です』なんて言えない。


 私は腹をくくって、民衆たちへと訴える。


「っ――『同胞』のみなさま、聞いてくださいッ! お二人の言う通り、私は革命軍の協力者ですッ! 邪悪なる王によって無理やり手籠めにされた母の無念を晴らすためにも、立ち上がることを決意した者ですッ!

 さぁみなさま、王とその家族は玉座の下にある隠し通路から逃げていきました! 共に彼らを追い詰めましょうッ!」


『おッ、オォオオオオオオーーーーーーーッ!』


 私の言葉に沸き立つ人々。

 あぁどうしよう……彼らの心を掴むために父王たちが逃げたルートまで教えてしまった……。

 これで名実ともに革命軍の仲間入りだ。もしもこのことが父王たちに知られたら、百回以上は恨み殺されてしまうだろう。


 そんなことを考えながら、私は脱出路に駆け込んでいく人々を見送ったのだった。



【レーナちゃんの活躍】


1:のちの革命軍リーダーを救出。

2:秘密の脱出ルートを調べ上げて報告。


・普通に国家転覆のMVP……!


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― 新着の感想 ―
[良い点] >「諸君ッ! 私は一度、邪悪なる妃によって囚われたことがある。しかし、そんな窮地を救ってくれたのが第二王女であるこのレーナだ! その時以来、私と彼女は改革を目指して連絡を取り合っていたのだ…
[一言] お母さん?
[良い点] 姫があくまで憎まれる存在であろうとしているのがブレてなくて良い。 [気になる点] 名誉にこだわる~は設定が少しおかしいかな、と。平民を孕ませても、どこかの貴族の養子にしてそこから妻に迎えれ…
2020/12/14 22:15 退会済み
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