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エピローグ中編 兄さんが恋人になった日

そんな訳で私とお母さんがおじさんと陽平君の家へ休み毎に通い始めて半年が過ぎた。


ある日、母さんが自宅のテーブルに私を呼び、真剣な顔で聞いた。


『友里ちゃん、日高のおじさんは好き?』


『好きだよ』


何でそんな事を聞くのか分からなかった、でも直ぐに答えは出た。

父親の居ない私にはおじさんの存在が嬉しかった。

買い物に、遊びに、一緒に行く度『きっとお父さんってこんな人の事なんだろうな』そう思っていたのだ。


『陽平君は好き?』


次の質問に答えは、


『...大好き』


声が小さくなる。

もう私は陽平君が好きになっていた。

5歳なのになんてマセていたのだろうか、でも本当に大好きになっていた。


優しい性格、少し茶色のサラサラ髪、小柄な身体、丸いお目め、長い睫毛、言い出すとキリが無い程に。


『じゃお母さん結婚しても良いかな?』


『結婚?お母さん誰とするの?』


『陽一さ...日高さんと』


顔を真っ赤にしたお母さん。

昔の知り合いって聞いてたけど、恋人だったと知ったのはこの時だった。

でも私は違う意味で衝撃を受けていたんだ。


『...おじさんと結婚しちゃうと陽平君と私は?』


『兄妹って事になるわね、陽ちゃんの方が少しお兄ちゃんだし』


『....いやだ』


なんとか声を絞り出す。


『友里ちゃん?』


『お母さん結婚しちゃ駄目』


『どうして?』


お母さんは焦るけど、でも本当に嫌だった。


『だって陽平君がお兄ちゃんになっちゃったら私、好きになっちゃ駄目って事でしょ?』


涙が出るけど止まらなかった。

兄妹じゃ恋人になれない、結婚出来ない事は知っていた。

凄いな5歳の私。


『そんな事か』


『そんな事って!』


笑顔の母さんに噛みついた。

思い返してみても、この時の一回だけ。


『大丈夫、法律的に問題ないから』


『ほーりつ?』


『ええ、民法の特例でね...』


今考えても5歳の子供にする説明じゃない。

実際全く分からなかった、でも結婚しても大丈夫と知った安堵感は格別だった。

それに母さんも必死だったんだ、お父さんと結婚する事に。


そうしておじさんはお父さんに、陽平君はお兄さんになった。

お父さんとお母さんは式を挙げなかった。

お互いの両親と疎遠になっていたそうだが詳しい事は知らない。


以前別れる時、お父さんの前の結婚相手の家から手切れ金がどうとか興味ない話。(今も興味無い)


そして始まった私達家族、違和感は不思議な程無かった。

お父さんは私を本当の娘の様に優しく、時には厳しく接してくれたし。

兄さんは私を本当の妹の様に遊んでくれた。


妹が産まれてもお父さんは全く変わらなかった。

母さんも兄さんに接する態度に変化は無く、兄さんも妹を本当に可愛がってくれた。

赤ちゃんだった妹に焼き餅を妬いたのは内緒(でもバレてたかな?)


小学校でも、中学校に上がっても、私は兄さんと一緒、兄妹だけど関係なくずっと一緒、変な噂する子は居たけど全く気にならなかった。

だって本当に幸せだったから。


次の目標は恋人になる事。

でも兄さんはなかなか私を女の子として扱ってくれなかった。


そんな私達の関係に変化が訪れたのは高校2年の夏だった。

兄さんの産みの母が突然現れたあの事件。


悪夢の様な出来事だった。

あの事件が全て片付いた後、私は兄さんに告白した。


どうしてか?

簡単だ、向こうの家族と絶縁した兄さんを恋人として支えたかったからだ。

兄さんとは家族だけど更に踏み出したかった。


最初の告白は兄さんの部屋で。


『私は兄さんが大好きです』


『ありがとう、僕も友里が大好きだよ』


『へへへ...ありがとう』


すっかり大人になった兄さん、ハンサムで頭も良く、高校でも人気者。

特に女子から人気が凄いのも頷けた。

そんな兄さんから大好きだよって。


にやけながら自分の部屋に、ベッドで悶絶していると()がやって来た。


『姉ちゃん、変な声出さないで』


兄さんの隣にある真ん中の部屋は妹に取られた。

私の部屋とも壁越しだから楓に丸聞こえだ。


『ごめんね、でも兄さんが私の事大好きって』


嬉しさのあまり、つい妹に言ってしまった。


『私にも言ってくれるよ、楓大好きだって』


うっとりとした楓、なんて兄ちゃん子なんだ。

って、私に対するあの大好きも楓と一緒?

家族としてなの?


『しまった!』


一世一代、最初の告白はこうして終わった。

うん、思い返しても恥ずかしい。


結局本当に恋人になれたのは大学を出て、社会人になってから。

初任給が出た兄さんから食事に誘われた。

まさかあの後兄さんから...


『友里、僕と付き合って下さい』


『あ...あの...家族として?』


全く事態が理解出来ず、とんでも無い事を口走る私。


『違うよ、一人の女性としてだよ』


『......いいの?』


『うん、待たせてごめんね』


この言葉で兄さんと恋人になれた。

ああ今もはっきり言える...幸せ。


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