3話転生前だよ!
俺は、高級感を感じる椅子に座っていた。お金持ちの家にありそうな椅子だが、座っているのがジャージを着た自分では全く絵にならない。
「それでは、転生に入りたいと思うのですが、問題はないでしょうか?」
「すみません、もう一回説明お願いして良いっすか?」
目の前の美人の言葉に対して、俺は挙手して答える。
「では、改めて」
笑顔(多分営業スマイル)だろうものを浮かべて、美人が言う。
「お願いします!」
豪華な椅子の上で、真剣に授業を受ける学生のように背筋をピンと伸ばして耳を傾ける。
「まず早詩風南さん、20歳……貴方は、あなたの住む地球に置いて亡くなられました。このことについては、ご冥福をお祈りいたします」
「亡くなった?誰が……俺っすか?」
「はい、その通りです」
美人の返答を聞きながら俺は、どうにか思い出そうとするが、死んだ瞬間など思い浮かばない。素直に目の前の人と話しているが、これは夢だよな……と思い始める。
「夢ではありませんよ。死の瞬間は、誰であれ良いものとは限りませんので、その記憶はこちらで預かっております」
と言い宝石と思われる煌びやかな石を見せてくる。
「あんたは一体……」
「私は、転生担当をさせてもらっている天使ですよ。神様の部下とでも思ってください」
「マジかよ!……ああ、いや失礼しました。本当ですか……」
慌てて言葉遣いを変える。神の下であれば、自分よりは確実に上だろう。
「ええ、本当です。言葉遣いは、気にしなくても良いですよ」
「どうも……えっと、俺の記憶って見せてもらえません?」
自分がなんで死んだかは、知りたくなった。
「わかりました。それではどうぞ」
と天使に言われた直後……
「ここは……」
俺は、信号待ちをしているのだった。