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第七十話 さらなる強化――【纏い身体強化】の魔術の極地――時空

 玲さんとの戦いにおいて、俺は風の【纏い身体強化】の魔術を会得するに至った。

 婆さんは言っていた。「本来なら【纏い身体強化】の魔術はかなりの魔力を食うんだがね」と。

 その通り、【纏い身体強化】の魔術は魔力の消費がかなり激しい。

 ――だからこそより俺向きの魔術といえた。なにせ俺は魔力を半無制限に使えるのだから。

 ………。

 あれ?

 ……いや、待てよ? ということは、この【纏い身体強化】の魔術と最も相性が良いのは『風』ではなくて、あの属性では……?

 俺は強くなるための新たなる予兆を感じた。

 だが、あの属性はただでさえコントロールが難しい。それを【身体強化】の魔術に乗せることが出来るか……?

 ………。

 試しにやってみるか。

 俺がやろうとしているのは、【時空魔術】の応用である。つまり【纏い身体強化】の魔術に【時空】属性を乗せられないかと考えていた。

 ――宛がわれた自室の中、俺は座禅を組み、集中する。

 ただでさえコントロールが難しい【時空魔術】を、身体強化の魔術に融合させること――それは超高難易度の魔術だ。

 俺は【身体強化の魔術】を発動しながら、同時に【時空魔術】も扱い始めた。

 異なる二つの魔術の魔力の流れが俺の体の中を駆け巡る。

 それを融合させようとすると……。

 部屋がカタカタと揺れ始める。

 その揺れがどんどん大きくなっていく。

 俺はたまらず、魔術の術式を消した。


「ぷはっ……!」


 息を大きく吐き出す。

 ……無理だ。失敗するのが怖い。

 時空魔術は失敗したら何が起きるか分からない。まあ、現段階で扱える魔力では世界が滅びるとかそんな大げさなことは起きないだろうが、俺一人くらいなら容易に異次元に飛ばされるくらいのことは起きそうだ。

 少なくても、今の俺に扱える技術ではない。それがハッキリした。

 だが――未来だ。未来に使えていればそれでいい。

 何となく分かった。俺はまだ魔力コントロールが足りない。それともっと上手く【時空魔術】そのものを扱えるようになる必要がある。

 それが理解出来ただけでも試した甲斐があったとうものだ。

 ……しかし、ちょっと扱おうとしただけなのに、物凄い魔力消費量だったな……。あんなの、普通の人には絶対扱えないに違いない。どれだけ魔力量がある者でも、ほんの一時使えればいい方だろう。

 ――もう間違いない。どう考えても俺向きの魔術だ。

【時空】の【纏い身体強化】の魔術を極めたら、一体どんな戦闘法が確立できるだろうか? それを考えただけでもワクワクする。

 とにかく今は魔力コントロールを上げるために、さらに努力しなければ。

 そのためには、結局のところ、やはり瞑想しかない。俺の力の源は瞑想に始まり、瞑想に終わる。そんな気がしてきた。

 あと、時空魔術の術式を改良したりして運用効率を上げる方法も試してみよう。

 ……やばい。楽し過ぎる。

 前世でRPGをやっていた時の何倍もの充足感に俺は満たされていた。

 何にせよ努力だ。一に努力、二に努力、三、四も努力で、五も努力。それこそが俺の力の源だ。頑張ろう!

 ただ、俺がいつも以上に奮起したその日のこと。

 王宮では地震が起きたともっぱらの噂になっていた。

 言わずもがな、俺のせいだった。

 ……ごめんなさい。





ブックマークと評価をしていただきありがとうございます。


次は明後日の19時半ころ投稿予定です。


よろしくお願いします。

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