退散
「ごめんなさい、それは駄目なんです」
私に迫って来ていた男達が自分達の背後から聞こえて来た声にバッと反応して振り向いた。そこには私が待っていた石橋君がいた。
「あ、誰だよお前」
耳にピアスをつけた男が石橋君に向けて睨みながらそう言った。
「あ、あの!僕は彼女とお付き合いしているものです!」
「お付き合いー?」
石橋君の言葉に男達は目を見合わせた。
「・・・なーんだ、恋人さんがいたのか。ならいーや。NTR趣味なんてねーし」
「んじゃ、次のオネーサン探そーぜ」
「大切な人ならちゃんと守っとけよニーチャン」
男達はそう言って笑った後、去って行った。・・・チャラくて厳つい見た目と喋り方の割には良い人達だったようで、私と石橋君はポカーンとしてしまっていた。
「・・・はっ、そうだ!黒峰さん!何か変な事は」
「・・・されてない」
「そ、そうですか・・・」
「良かったー」と石橋君は呟きながら胸を撫で下ろしていた。
「・・・ところで、黒峰さん。何でここに?」
石橋君が尋ねて来たが、私は何かいけなかったかと固まってしまった。
「あ、別に駄目だったとかじゃなくて、まだ約束の時間の30分前ですよ?」
あ、良かった。気付かないうちに悪い事をしたって事じゃ無いのね・・・。
私はホッとして胸を撫で下ろした。