次の日の黒猫ちゃん
「それで?その石橋君とはどうなったの?」
次の日の昼休み、一緒に中庭の物影にあるベンチに座る幼馴染の沙耶ちゃん・・・馬場 沙耶子がお弁当をつつきながら野次馬根性丸出しで尋ねてきた。
「どうも何も・・・その日は「これからよろしくね」で、お互い家に帰ったけど」
「いや、陽ちゃん!?君達は今何歳よ!」
「え、17だけど・・・」
沙耶ちゃんの勢いに押されながらも答えると沙耶ちゃんは「かぁ〜っ」と言いながら額に手を置き首を横に振った。
「いや、陽ちゃん高校生でしょ!そんな解散の仕方、今時小学生でもしないよ!」
「いや、別にいいでしょ」
私は唇を尖らせながら言った。人見知りの私がこの学校で自分を素直に見せながら話せるのは幼馴染の沙耶ちゃんぐらいしかいないのだ。
「しかし、石橋君って優良物件じゃん」
「沙耶ちゃん、そんな言い方は駄目だと思うよ?」
「けど事実でしょ〜」
「まぁ、そうかもだけど・・・」
沙耶ちゃんが箸を咥えながらそう言った。
沙耶ちゃんの言う通り、石橋君は女の子に人気だ。見た目は小動物のように可愛く、お人好しと言っても過言ではない程にあちこちで人の手助けをしているのを見かける。だからか、『柴犬君ファンクラブ』なんてものが出来ているらしい。
「しかし、陽ちゃんは人気者の柴犬君のハートを取っちゃったわけだ」
「人聞きが悪いな〜」
「けど、その通りでしょ?」
「うっ・・・ま、まぁ」
そこで沙耶ちゃんはこちらに向き直り、真面目な顔になった。
「しかし、問題はそこじゃあない」
「問題?」
私が分からず首を傾げると、ガクッと沙耶ちゃんが膝上の弁当箱を落とさずに器用にコケた。
「いやいやいや、陽ちゃん。アンタの性格だよ」
「?私、素行悪くないよ?」
「いや、素行の悪さじゃなくて、人見知りの話だよ」
「あっ・・・」
そこまで言われて気が付いた。
・・・確かに私の人見知りはお付き合いするのに足を引っ張っちゃうし・・・
「陽ちゃんって前々からチョロインの素質があると思ってたんだけど、やっぱりあったね」
「チョロインって?」
「陽ちゃんは知らなくていいんだよ」
沙耶ちゃんは微笑みながらそう言った。
私も「そう」と頷いて、お昼の弁当に箸をつけた。
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side馬場
(好意を堂々と示されてキュンと来ちゃうなんてね・・・。まぁ、陽ちゃん自身気付いてないみたいだし、言わないでおこう)
私は隣で幸せな笑みを浮かべて玉子焼きを食べている昔からの親友を盗み見て、そう結論付けた。
恋愛物って難しい……。
もっと精進しなくては!